- 「気分は下剋上 叡知の宵宮」1
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「ロウソクはいつ点ける?」
最愛の人の弾んだ声が夜空に溶けて、そして星になりそうな感じだった。とはいえ、星が降るような天気ではなくて曇天だった。
「あ……?雨だ……!」
かなりの雨量が降ってきた。
「ロウソクとか蚊取り線香は避難させたほうがいいな」
屋上の入り口付近は辛うじて屋根がある。せっかくのイベントに、文字通り水をさされたのだけれども仕方ない。
「夕立でしょうかね?」
屋根のある場所に可燃物を避難させてからスマホを見た。
「五分後には雨も止むみたいですよ。それまでの間は、狭いですがここで雨宿りしましょう……」
雨雲のレーダーまでを知らせてくれるとは便利な世の中になったなと感心した。もっとも祐樹は病棟か救急救命室にいることが多いのでこのサービスを使うことは滅多にない。まとまった雨のせいで、最愛の人の黒い浴衣が白く滑らかな素肌にはりついている。濡れ雑巾をかぶったような湿度なので風邪を引くことはないだろうが、目の毒だ。
「五分後か。だったら、大文字焼きの予定通り開催されそうだな」
横に佇んだ最愛の人の柑橘系の香りと雨の匂いが鼻腔をくすぐる。
「そういえば、何かの本で読んだのですけれども、ホテルの部屋に入ったときの行動で性格が分かるそうですよ。最もあざといのは、夜景を見るふりをして窓辺まで行き、『わぁ、とても綺麗』とか言いながら男が近づいてくるのを待つパターンです。夜景なんて見ていなくて男性がどう行動するか注意深く窺っているみたいです。その次が……」
こういう会話をしているのは、夕立が上がった後に盃に「大」の字を映したのち、待ちに待った愛の交歓への食前酒のようなものだ。
「そうなのか?」
最愛の人は黒い浴衣からすんなりと伸びた首で祐樹を見上げている。
「そうみたいです。で、その次がベッドに乗って『ふかふか』とかいながら、男性を待っているタイプだそうです。無邪気さを装うみたいですね。最も良心的というか、一秒でも早く抱かれたいと思う人は、ホテルのドアの前で佇んでいる人だそうです。貴方もこのパターンですよね」
最愛の人は白く長い首を、白鳥のように優雅に傾けている。
「そういう駆け引きがあるのか。私は、一秒でも早く祐樹に抱かれたいから、ドアの前で立って待っている。――それは、祐樹にとって興ざめなのだろうか?」
怜悧で端整な声がスコールを思わせる雨に溶けていくようだった。
「まさか、貴方の振る舞いが素晴らしいと思っています」
本来ならここで浴衣の襟から手を入れて、なし崩し的に愛の交歓に持ち込みたいところだが、盃に「大」の文字を映して飲むこと、そしてロウソクを多数立てて、その幽玄の明かりのもとで愉しみたいという気持ちが勝っていた。
「そうか。それは良かった。ただ、天神祭りに行ったとき、窓の外の花火があまりに凄かったので、窓辺に近寄ったことがあったかもしれないな……?」
そうだったかと思い返してみるが、定かではない。
「あの見事な花火だったのである意味仕方がないと思います」
スマホを見ると「二分後に雨はあがります」と書いてあった。いわゆる夕立なのだろう。暦の上ではすでに秋だが、まだまだ残暑は厳しいなと苦笑してしまった。
「私も暇つぶしに読んだ本で、ホテルに入った女性が、男性のことや、ホテルの施設、そしてバスルームで面白くないことが続き、一時間以上時間を潰すらしい。『待ち焦がれる気分で男性と抱き合ったことはない』と書いてあって、そんなに嫌だったらホテルなどに行かなければいいのにと思ってしまった」
最愛の人の言うとおりだ。
「その女性は商売として男性に抱かれるのでしょうか?」
祐樹にはまるっきり縁はないものの、パパ活とかデリバリーヘルスなど望んでもいないとか後者だとお金を貰える代わりに男性と……。ああ、そういえばデリヘルの場合、シャワーなどは男性の前では浴びないと聞いた覚えがある。
「お金というか、お金以上に愛人契約を結んで欲しいというヒロインの話だった。バブルの真っ最中は不動産会社の愛人をしていて、バブル期が終わったのちにその男性が多額の借金を抱えて面倒を見切れなくなり、しっかりとした商売を営んでいる友達に譲渡されたということだったな。その不動産屋に見初められたときは、売れないモデルをしていたという設定だった」
……愛人を譲渡……最愛の人が話してくれるということは本で読んで理解不能だったからに違いない。
「それも理解に苦しみますね。そのヒロインは自分の商品価値を高めるために、モデルを頑張っているのでしょうか?」
どう考えても売れないモデルよりも売れているモデルのほうが好きにパトロンを選べそうだ。モデルの全てが男性に頼る生活をしているかまでは分からないし興味もない。
「いや、そうではないみたいだな。二人目の愛人との仲があまり上手くいっていないために、とにかく金払いのいい男性を見つけて乗り換える気満々といった感じだった。それも『自分がちやほやされたい』とか『金銭を自分のためにたくさん使ってくれる男性』がターゲットらしい。私も有名なモデルになるように頑張っていたなら、もう少し主人公に感情移入できたと思うのだが……」
お金目当てで男性を物色するという生き方は、その男性がいなくなったら生活の危機のような気がする。
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