- 「気分は下剋上 叡知の宵宮」1
- 「気分は下剋上 叡知な宵宮」 2
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- 「気分は下剋上 叡知な宵宮」28
- 「気分は下剋上 叡知な宵宮」29(18禁)
- 「気分は下剋上 叡知な宵宮」30(18禁)
- 「気分は下剋上 叡知な宵宮」31(18禁)
- 「気分は下剋上 叡知な宵宮」32(18禁)
- 「気分は下剋上 叡知な宵宮」33(15禁)
「激しく愛し合う行為ももちろん大好きだけれど……。祐樹のぬくもりに身体を預けて、ささやかなスキンシップを交わすこのひとときこそ、私にとって何より心を安らげ、そして魂を満たしてくれる時間だ」
最愛の人は、咲き切ってなお芳香を放つ深紅の薔薇のような微笑を浮かべていた。
「私もですよ。それに……こんな大きな花火を真横で見ることができるオプション付きというのはなかなかできない体験ですからね」
紅色の額にはりついた髪を指で優しく梳きながら告げた。
「来年もこの花火が見たい。もちろん祐樹と一緒にという前提なのだけれども」
もはや聞きなれた轟音が窓を震わせた後、青と銀の柳の葉のような花火が散っている。最愛の人の深紅の薔薇のような笑みが、朝露をまとった青い薔薇へと変化するのも絶景だった。
「花火よりも、聡のほうがずっと綺麗で、私は朝まで見つめていたいです……。来年は、スケジュールを何とかして調整し、またこのホテルに来ましょう」
最愛の人は花火の煌めきを纏って、ただでさえ怜悧なその顔がどこか儚げに見えた。そこに浮かぶ笑みは、祐樹にとってこの世の何よりも美しい。
「――正直なところ、愛の交歓の後の戯れの楽しさを知ったのは聡と付き合ってからです。それまでは、事が済めばさっさと服を着て、一刻も早く帰りたいと思っていました」
最愛の人は驚いたように切れ長の目を見開いていた。
「そうなのか?いや、以前にも祐樹にそう言ってもらった覚えはあるけれども、本当だとはどうしても思わないな。なぜなら祐樹は誰にだって優しい人だから」
最愛の人は自己の魅力を過小評価しすぎだ。まあ、逆よりは好ましいけれども。
「優しくはないですよ。聡が特別で格別なだけです。本能だけでなく精神を満たしてくださるのは聡一人です。その想いは生涯にわたって不変だと誓えます」
最愛の人は満開の薄紅色の薔薇の笑みを浮かべ、小指を差しだしてきた。
「指切りげんまんしよう……」
彼の無邪気で無垢な笑みとささやかな約束事を交わそうとする様子は、先ほど祐樹の身体の上で淫らに肢体を上下に動かしていた人と同一人物とは思えない。そういう落差にも強く惹かれてしまう。
「いいですよ」
小指を絡ませ、ささやかながらも重大な誓いを交わした。そんな二人を祝福するかのように紅い薔薇のような花火が爆ぜている。
「先ほど、廊下で祐樹がここを触れただろう?」
最愛の人の紅色の指がルビーの尖りにそっと触れた。
「はい。食前酒はインペリアルラウンジで済ませましたが、その情欲の炎を煽りたくて、つい……。それに、せっかく昂った聡の肢体があの迷惑なコスプレ女配信者に邪魔されてしまいましたからね。仕切り直しの意味もあって……」
最愛の人は描いたように整った眉を寄せていたが、唇にはほのかな笑みを湛えていた。
「誰かに見られたらとは思わなかったのか?」
彼も、そういうスリルがあったほうが情欲の炎が燃え上がるタイプだが、それは黙っておいた。
「そのリスクはほとんどないと考えていました。客室にいる宿泊客は花火を見るために部屋を取った人ばかりですよね?だから、最初の花火が上がった時から窓に釘付けだと容易に推測できました。例外はルームサービスなどのホテルのスタッフで、そちらには気を配っていましたよ」
宥めるような口調で告げ、いちご飴を最愛の人に渡した。
「次は大文字焼きだな。浴衣でのデートは……。屋台などは出ているのだろうか?」
真っ赤ないちご飴で唇をさらに紅に染めた最愛の人が幸せそうな笑みをこぼしている。
「屋台ですか?お祭りではなくて、宗教行事ですからね。期待は薄いかと思いますよ。調べてはみますが」
最愛の人はイチゴの香りのする唇を祐樹に近づけて、「祐樹と一緒なら、なんだって嬉しい」と言葉を紡ぎ、甘い唇を重ねた。
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