「――『竹取物語』だったと思いますが、かぐや姫が月を見て泣いている場面で翁が『月を見るのは不吉だ。見ないように』と言うシーンがあったと思います。また月を意味する「luna」に「tic」をつけて狂気じみたという意味の英語がありますよね。こんなに美しい月を見ていたら『何かに狂うのでは?』と思った昔の人の気持ちが分かるような気もします」
最愛の人は薄紅色の首を優雅に振っている。
「ルナティックは、月の満ち欠けが精神に影響を与えるという考え方だな。祐樹の言うとおり『狂気』という意味もあるのだけれども」
最愛の人の紅い唇に触れるだけのキスを落とした。
「私は――聡に狂いたいです。どうですか?一緒にお互いを狂ったように求めませんか?」
祐樹はとっておきの掠れた低い声を最愛の人の紅色の耳朶に毒のように流し込んだ後、耳朶を甘く噛んだ。最愛の人の紅の肢体がしなる様子は、この旅館の見事な池で見た錦鯉よりもはるかに艶やかで、そして優美だった。
「そうだな……月も存分に見たし、今度は祐樹を、感じたい……」
最愛の人の、健康的な色香をまとっている鎖骨のくぼみに指を当て、繊細に動かした。胸の尖りほどではないものの、彼の弱い場所だということは知っている。何しろ彼の感じる場所は全て知悉しているというのが、祐樹の心に秘めた誇りだ。
「あ……っ、祐樹……もっと下を愛して欲しい」
月の銀、そして錦鯉の紅が混じった艶やかな声が鈴虫の声よりも煌めいていた。
「お湯でのぼせてもいけませんので、そちらで愛し合いましょう」
露天風呂の奥には平らな岩が置いてあり、月の冴え冴えとした光とその光を受けて銀色に光っているススキが見事だった。大人が四人以上座れるほどの広さもあることから、ここでも月見酒が楽しめるという旅館の気遣いかも知れない。仲居さんが用意してくれた月見酒とその肴の量からして、お湯に浸かったり、ここで月を愛でながら飲んだりして欲しいという意図だろう。
最愛の人をその岩に横たえて祐樹は唇を月の光よりも紅く煌めく尖りへと落とした。もう片方は親指と中指でほんの小さな突起を摘まんだ。歯で噛んだと同時に指を鳴らす勢いで彼の尖りを叩いた。
「祐樹……っ、悦……っ。もっと……強くして欲し……っ」
二度目の愛の交歓だからか、それとも月に魅入られたのか、薄紅色の肢体が焦れたように祐樹の愛撫をねだり、しなやかに反っている。月の光に照らされた太刀魚のような艶めかしさが最高にそそる。
「聡は、胸の尖りを愛されると……」
歯で挟んで先端部分を宥めるように舌を動かす。同時に人差し指で先端部分のわずかな部分を丸く円を描いた。最愛の人の長い足が要を失った扇のように開いていく。
「指がいいですか?それとも……」
最愛の人の細い手首を掴んですっかり熱く滾った祐樹の楔に近づけた。彼は祐樹のくびれの内側を、指の微細な動きで愛してくれるのも最高にいい。裏筋をツーっと辿った細い指が祐樹の二つの果実の両方を手で包むとやわやわと揉むこむように動かしてくれた。
「聡、貴方の手の動きが的確すぎて……、それだけで頂点を極めそうです」
熱い息を尖りにかけると、最愛の人は甘い声を小さく零していた。その声は鈴虫の鳴き声よりも耳に心地よい。
「何度でも達してくれていい……」
淫らではあるものの聖なる声のような気がした。彼の指に導かれるまま、白桃のような双丘の奥に息づいている門へと祐樹の先端部分を近づけた。最愛の人は期待に満ちたような嚥下音を鈴虫の音に混じらせている。祐樹の先端部分に溜まった淫らな水晶の雫と彼の極上の花園の門が奏でる熱い音が月の静謐な光の下でかすかに響いた。
「あ、祐樹……っ、そこ……とても悦……っ」
花園の中の凝った部分を重点的に突く。浅い動きを繰り返す祐樹のリズムに合わせて彼の腰も淫らなダンスをしているようだった。
「祐樹……ゆうき……っ、大きな波がくる……っ」
切羽詰まった声を上げる彼の薄紅色の肢体が、桜の若木のように撓った。紅色に染まった端整な顔に、涙の雫と汗の大きな粒が月光を反射していて、とても綺麗だった。ただ祐樹の下腹部に当たっている彼の欲情の象徴はヒクヒクと動いているだけで真珠の迸りはなかった。彼は、祐樹に胸の尖りと花園の中の弱い核を同時に愛されると、乾いた絶頂を迎えやすい。きっと今もそうなのだろうと思って、腰を進めた。
「あ……祐樹……っ、頭の中に、お月様が何個もあって……。それが万華鏡のように煌めいたかと思うと、爆発している……感じだ」
最愛の人は悦楽のあまり閉じられなくなった唇を必死に動かし、祐樹に「どう感じているか」を教えてくれるのが健気で淫らだった。祐樹が腰を進めると、最愛の人の震える両足が祐樹の身体へと絡みつき、腰に艶やかで無垢なXの字を形作った。
その二人だけの愛の営みを月の光が祝福するかのように照らしていた。
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