医療モノ

短編

「気分は下剋上 BD・SP」おまけ中編

「祐樹が帰ってくる時間には勝手に目が覚める」と言っていた最愛の人を起こさないように細心の注意を払っていたが、ベッドルームに入ると最愛の人が半身を起こしていた。「祐樹お帰り」 今まで熟睡していたらしいのに、冴え冴えとした眼差...
「気分は下剋上 知らぬふりの距離」

「気分は下剋上 知らぬふりの距離」54

 やっとエレベーターの扉が開いた。通勤時間の電車もかくやというほどの混雑ぶりなのはいつものことだ。しかも車いすや松葉づえの患者さんも乗っているので、車椅子対応の広いエレベーターですら人であふれている。祐樹と柏木先生、そして...
短編

「気分は下剋上 BD・SP」おまけ 前編

「おや、偶然ですね?田中先生、今お帰りですか?」 森技官がThe官僚様といった黒塗りのクラウンに寄りかかっている。運転席には運転手も座っていた。「偶然なわけがない!今何時だと思っている。午前三時なのだぞ」と言いたいけれども今夜の救...
tukimi

「気分は下剋上 月見2025」11

「このお菓子が売っていた土産物コーナーは旅館にありがちなフロント近くではなくて、奥まったところにありました」 小さな箱を最愛の人に渡し、祐樹は、最愛の人が折ってくれた精緻な紅葉の折り紙をそっと手の上に載せて眺めた。見れば見るほどよ...
「気分は下剋上 知らぬふりの距離」

「気分は下剋上 知らぬふりの距離」53

「初めましてですよね?心臓外科の田中と申します。これからよろしくお願いいたします」 挨拶を交わしたからには顔と名前は憶えておかなければならない。最愛の人なら一秒も経たずに暗記するだろうが、あいにく祐樹はそんな特技は持ち合わ...
tukimi

「気分は下剋上 月見2025」10

「はい?」 営業用の笑みを浮かべて返事をすると、いい年をした仲居さんは頬をほんのりと赤らめた。祐樹は女性からのこういう反応に慣れているが、全く喜ばしいことではない。久米先生に祐樹の本音を話せば、嫉妬と憎悪の念が強すぎて生霊になりそ...
sira

「気分は下剋上 知らぬふりの距離」52

「医局内の医師ならそれこそ医局長の柏木先生や、それでも被害が続くようなら香川教授からの厳重注意で鎮火はするでしょう。香川教授はそこまでなさらないと思いますが、例の瞬間湯沸かし器のような教授の場合、僻地の病院に左遷されること...
sira

「気分は下剋上 知らぬふりの距離」51

「こちらは入院患者さんの有瀬誠一郎のご子息の夏輝さんです。すっかり広瀬看護師と打ち解けたようですね。夏輝さん、こちらは医局長の柏木先生です」 柏木先生は一瞬怪訝そうな表情を浮かべた。医局長として入院患者の把握は職務の一環だ...
sira

「気分は下剋上 知らぬふりの距離」50

 単に紳士的に振る舞おうとしているだけなのか、それとも……。しかし、妻の香織さんや夏輝という息子がいる。早計な判断は慎むべきだろう。ただ、確かに有瀬氏の病室に入ったときに、広瀬さんや三好看護師がいても淡々としていたなと思い...
月見2025【完】

「気分は下剋上 月見2025」8

「この宿も素晴らしいな。お香の香りがどこからともなく漂ってきて、精神が澄んでいくような気がする。それに一輪挿しに飾られた、萩とお・みな・・えし・・の花が秋に相応しい繊細さだ……」 旅館のロビーに足を踏み入れた最愛の人は満足...
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