医療モノ

sira

「気分は下剋上 知らぬふりの距離」67

「臨時教授会でセクシュアルハラスメント禁止条項は当然として、パワーハラスメントの厳禁についても明確に通します。特に真殿教授には、強く釘を刺します」 怜悧な声が凛と響いた。川口さんと西さんは、土下座せんばかりの勢いで頭を下げている。...
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「気分は下剋上 知らぬふりの距離」66

 兵頭さんは、精神科の閉鎖病棟よりもよく考えられているというこの病室のベッドの上に、再び「虚無のお地蔵さん」のように座っていた。祐樹は、普通の病室ではシーツは取り外し可能な仕組みになっているのに、ここではベッドマット――詳しい名称...
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「気分は下剋上 知らぬふりの距離」65

「これはすごいですね。防弾ガラスで割れない仕組みですね。トイレも固定式で、便座のフタもありません。患者さんは驚くべき力を発揮しますからね。便座のフタだって軽々と取ってしまって武器にするケースも実際経験しています。カーテンも...
sira

「気分は下剋上 知らぬふりの距離」64

「田中先生、この患者さんをどの病室にお連れすればいいのですか?」 ポロシャツ姿の男性が兵頭さんの腕をがっしりと掴んでいた。その腕の太さは、広瀬看護師のウエストくらいだった。祐樹のことを知っているということは病院関係者だろうが、あい...
月見2025【完】

「気分は下剋上 月見2025」22

「ここの、この形が変わったら、祐樹は興ざめなのだろうか?」 最愛の人は紅色に染まった胸の尖りを細い指でそっと触っている。先ほどの愛の交歓の後の高揚した気持ちと、程よく酔いが回った日本酒のせいで不用意なことを言ってしまったと後悔した...
「気分は下剋上 知らぬふりの距離」

「気分は下剋上 知らぬふりの距離」63

「香川教授、兵頭さんの件ですが、抑うつ状態が悪化しました。目に光がなく、呼びかけにも全く反応しません」 この場にいる看護師たちにも十分聞こえるように大きな声を出した。『分かった。すぐに下りていく。兵頭さんの周りには誰かついているの...
◯◯の秋 2025【完】

「気分は下剋上 ○○の秋」22

 その音は栗のイガが落ちるような軽さのあるものではなかった。明らかに動物が立てた音だと祐樹は判断した。そして、脳裏に浮かんだのは「イノシシか熊か」という分かり切った二択だった。最愛の人は、彼が作ってくれた最高に美味しいお弁当を食べ...
「気分は下剋上 知らぬふりの距離」

「気分は下剋上 知らぬふりの距離」62

「彼は美山みやま総合医療センターにいます。名前は山敏弘です。マウンテンの山に、「とし」は、敏感の敏、「ひろ」は弓偏にカタカナのムのような字です。しかし、それが何か?」 黒木准教授は不思議そうに。太い首を傾げた。「まだ計画中なのでお...
◯◯の秋 2025【完】

「気分は下剋上 ○○の秋」21

「祐樹、皮むきも任して欲しい」  最愛の人の端整な顔には焚き火の煙の「すす」がついている。薄紅色に上気した肌に「黒いすす」は似合わないような気がしたが、そんな余計なものがついていても、いや、ついているからこそ新鮮だった。どこか野山...
「気分は下剋上 知らぬふりの距離」

「気分は下剋上 知らぬふりの距離」61

「私が医局内で久米先生に行っていることはパワハラにあたるのでしょうか?」 不安になってきたのでこの際最愛の人に聞いてみよう。祐樹は久米先生にパワハラをしている自覚はなく、むしろ愛のあるイジりだと思っている。そして久米先生も、わざわ...
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