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「どうぞ、お入りください」
呉先生は朗らかな声を出したのちに、ひらりと立ち上がってコーヒーを淹れに部屋を横切った。ドアが静かに開いて、白衣の裾を天使の羽根のように翻し、最愛が入室してきた。
彼がこの部屋に来ただけで格調の高い部屋に白い薔薇が咲いたようになる。
「お邪魔します。少し手術が長引いてしまいまして……。夏輝さん、お父さまの容態は安定しています」
夏輝に向かってほのかな笑みを浮かべ、呉先生が差し出したコーヒーを嬉しそうに受け取っている。夏輝は安心したような笑みを浮かべ、ぺこりと頭を下げた。
「昼食は召し上がりましたか?」
最愛の人がここに来るのを優先してご飯を食べていないということも充分あり得る。
「祐樹、心配してくれたのは嬉しいが、秘書が気を利かせて用意してくれていたのを大急ぎで食べてからこちらに来たので大丈夫だ。祐樹こそ食事は摂ったのか?」
夏輝は照れたような笑みを浮かべて呉先生を見ている。
「ゲイバーで初めてお会いしたときにも思ったんですけど、めちゃくちゃお似合いで……すごく仲が良いんだなって思いました……」
一応声は小さいものの、祐樹達にも聞かせるように言っているのだろう。
「教授と田中先生は、仲が良すぎて、喧嘩もしたことがないそうですよ?」
呉先生はマロングラッセを載せた皿を最愛の人に勧めている。
「え?喧嘩もしたことがないんですか??」
夏輝が驚いたように呟いている。
「そうです。ウチなんかは『喧嘩するほど仲が良い』を実践していますが、あのお二人は特別で、格別みたいですよ」
呉先生と夏輝との会話を聞き流し、最愛の人に向き直った。
「食事は済ませましたので大丈夫です。身体が資本なので、倒れるわけにはいかないですから」
祐樹の答えに最愛の人は安堵したような笑みを浮かべて、マロングラッセを薄紅色の唇に運んでいる。
「これ、砂糖の味ではなくて、栗の味がしっかりと自己主張していますね。とても美味しいです」
最愛の人もこのマロングラッセが気に入ったようで、早くも二個目を口に運んでいる。
「貴方もご存知のように、私は甘い物があまり好きではないのですが、この呉先生お勧めのマロングラッセは特別ですね……。何ならもっと栗の味を楽しめたらもっといいのですが、そういうものは商品化できないのでしょうね……」
祐樹の言葉を聞き、呉先生が指を鳴らしたものの、「ぱちり」という音にはならず、ただの擦過音に終わってしまったのが残念だった。
「甘さがある程度あるほうが、商品受けもいいかとおもうのですが、田中先生やウチの同居人のように甘い物が苦手な人間向けに、教授がお作りになったら如何でしょう?丹波篠山に以前デートに行かれたのですよね?ウチの庭で行ったバーベキューでイノシシの肉を田中先生が持って来てくださって、同居人が平静さを装いつつも額に脂汗を流しているのは面白かったです。あの程度の血でビビるだなんて、潜入先の病院では皮膚科専門じゃなきゃ怪しまれますよね?
それはそうと、あそこは栗の名産地でもあるので、田中先生のために栗の味がメインのマロングラッセを作ったらどうですか?」
棘のあるスミレといった呉先生の言葉に夏輝は「は?」といった感じで口を開けている。最愛の人が加わったことと、そしてお父さまの誠一郎氏の容態が落ち着いているということを最愛の人から聞いたことで精神的にも楽になったみたいだった。
「お医者さんって、血なんて全然平気かと思っていました。昨日、救急救命室の家族控室で待っていたときに、ウチの父以外は交通事故でたくさんの患者さんが搬送されてきてましたよね?開胸心臓マッサージって言うんですか?僕が使った『設定』のAEDなんかじゃ効かない人には直接心臓を手で掴んで動かすんですよね?そうお医者様がご家族に説明していました」
夏輝ではなくて、呉先生が青ざめたスミレといった表情に変わっている。
「医師でも血が苦手な人は多数いますよ。私も実はそうですし、彼のパートナーなんて内臓の臭いや血を見ると、失神しないように鋼の精神力で耐えています」
呉先生が穏やかに夏輝に説明している。
「苦みのついたマロングラッセ、祐樹は食べたいか?」
最愛の人が祐樹の顔を真剣そうな眼差しで見ている。
「はい!貴方の手作りならさらに美味しいでしょうから是非とも。栗拾いに一緒に行くデートというのもいいですね。あわよくば松茸なども見つけられると良いのですが」
最愛の人とデートプランを考えるだけで楽しい。
「そんな医者様が居るんですか?血が苦手とか医学部に入る前に分かりそうなものだと思いますけど……」
夏輝は持ち前の空気を読む力を発揮して呉先生の心にもするりと入っていっているような感じだった。最愛の人と栗拾いデートというのも楽しそうなので、デートプランはしっかり練ろうと心にメモした。
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