- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」1
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- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」教授視点 1
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- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」27
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- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」教授視点13
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」29
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- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」教授視点15
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」31
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」教授視点16
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」32
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」教授視点17
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」33
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」教授視点18
それぞれが何を思っていたのか、併せて読んでいただければ幸いです。
「教授、藤原さんの件を受けたリスケが出来ました」
遠藤先生がプリンターから出力したまだ温かい紙を手渡してくれた。有瀬氏やナツキさんの件を少しだけ後回しができることにホッとした。祐樹は非常に鋭いので、自分の些細な違和感から一気に真相にたどり着く気がする。その点藤原さんのことは隠し事がないぶん気が楽だ。
「黒木准教授、手術のリスケはこれで行きましょう」
黒木准教授は遠藤先生のパソコンの画面を厳しい目で見ている。
「遠藤先生、手術室にメールと、そして念のため明日の朝にも連絡してください」
祐樹は男らしく整った眉を寄せている。有瀬氏とナツキさん関係でおかしな点でも見つけたのかもしれないと思うと何だか落ち着かない。
「教授、よろしければ、そのうちの一件の執刀医を私に任せてくださいませんか?」
一日に三件の手術が遠藤先生によって組まれていた。その程度は余裕でこなせる自信はあったが、祐樹の好意に満ちた申し出は単純に嬉しかった。祐樹が眉根を寄せていたのは手術が立て込んでしまっていることが原因だったようで安心した。嘘が苦手だと自覚はあったし、祐樹に対しては黙っているだけで嘘はついているわけではない。それなのに、心のやましさがあるせいか、祐樹の一挙手一投足が気になってしまう。
「ゆ……祐樹が手助けしてくれるのは本当にありがたい。そうだな……」
祐樹が助けてくれるなんて望外の喜びだ。そして、プライベートでは祐樹と呼び捨てにしている。その癖が抜けなくて、病院でも「ゆ」と言ってしまう。あ!と思って口を閉じようとしても必ず「ゆ」と唇から零れ落ちる大切な名前の一部だ。祐樹はともかく他の医局員が気付いていないのは喜ばしい。
祐樹も外科医としてめきめきと腕を上げている。ひたすら手技をこなすことで腕を上げている自分と異なって心臓外科医の才能のある祐樹は、国際公開手術の成功体験もあいまって本当に頼れる執刀医になった。後は場数を踏めば、世界中どこに出しても恥ずかしくない心臓外科医になるだろう。一応先輩として、そして恋人としてこんなに嬉しいことはない。
「では、この安西さんの手術を、ゆ……田中先生に回していいか?」
さほど設備と人材が整っていない病院だと「手術不可・転院必須」の容態の安西さんだが、祐樹ならば充分に力を発揮してくれるだろう。
「分かりました。香川外科の金看板に傷をつけないように頑張ります」
……いや、看板ありきではなく、日々たゆまぬ手技を積み上げてきた結果だと思っている。一応「看板教授」とは言われているのは知っているが、看板を守るために隠蔽も辞さないような危ない袋小路には入りたくない。祐樹はごくごく軽い気持ちで言ってくれたことは分かっているが、黒木准教授も医局にいる今、はっきりと言っておくのがいいと思った。
「田中先生、ウチの科がどうこうではなく、患者さんの生活の質が格段に向上できるように頑張ってくれればいい。看板のために手術をするのではなく、安西さんのために、ゆ……田中先生の手技をいかんなく発揮して欲しい」
祐樹が黒々と輝く瞳でこちらを見つめている。そんな目で見られたら、ナツキさんのことや有瀬誠一郎氏の会社を調べたこと、そしてキャッシュフロー計算書までみたことを話してしまいたくなる。
「はい、分かりました。以後気をつけます」
先ほどから長岡先生が、「ゆ……田中先生」と言うたびに可笑しそうな笑みを浮かべてこちらを見ている。白衣の下はシルクのブラウスなのだろう。凝ったレースと刺繍が入っている斬新なデザインだが、最近はあのようなものが流行りなのだろうか?女性のファッションについてはまったく分からない。
「長岡先生、少しよろしいでしょうか?」
祐樹が滑舌のいい落ち着いた声を出している。
「はい。何ですの?」
長岡先生は祐樹のほうへと歩み寄っていく。祐樹が何か言うたびに彼女の顔が赤くなっている。いったい何の話をしているのだろう?気になってチラ見した。
「教授、少しお時間宜しいでしょうか?」
長岡先生に声をかけられて振り向き、彼女が近づいてこないので祐樹と共にいる医局の端まで移動した。なぜ長岡先生が赤面しているのか分からないまま。
「何かありましたか?」
あったからこそ、こうして呼ばれているのだろうと自分に突っ込んでしまった。しかし、祐樹と話した長岡先生が真っ赤な顔をし、汗をだらだらと流しているからにはよほど重大なことがあったに違いない。とはいえ、何があったのか、長岡先生の全身を見ても分からなかった。いったい何がどうなっているのだろう?
「実は私も気が動転していて……室内着として着ていたパジャマのままでこちらに駆けつけたのです。白衣を脱いだらさすがに看護師には気づかれてしまいますわよね……。どうしたら良いでしょうか?」
え?と思った。変わったデザインのブラウスを着ているのかと思っていた。長岡先生は病院のファッションリーダーとして看護師に羨望の眼差しで見られていることは知っていた。また、パリコレなどの様子が自分も愛用しているフランスの老舗の店舗でビデオかDVDで流れていて、「こんな服を着て街を歩いたら絶対に指をさして笑われるだろう」と思えるものも多かった。
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