短編置き場
短編 「気分は下剋上 BD・SP」前編
「森技官、田中です。お時間少しよろしいですか?」 スマホ越しに慌ただしそうな物音が聞こえてくる。『重要な用件なら時間は作ります。藤宮!この法案の第二項は対象者が少なすぎる!社会的弱者をさらに救うように修正しないと厚労委員会にも通ら...
短編 「気分は下剋上 BD・SP」中編
キャリア官僚サマらしく黒塗りのクラウンなのはまだ想定内だったが、どこをどう走ってきたのか、うっすらと灰色の砂みたいなものが車体全体を覆っている。それにバンパーがぐしゃりとひしゃげている箇所と、白い擦り傷がついて樹脂の下地が覗いて...
短編 「気分は下剋上 BD・SP」後編
祐樹の愛車の後部座席は狭い。もともとこの車を買ったときには最愛の人しか乗せる積りはなかったので当然なのだが。華奢な身体の呉先生はともかく、森技官には窮屈だろうと思ってミラーを見ると案外穏やかな表情で身体をシートに預けて振動に身を...
tanpen 「気分は下剋上 BD・SP」おまけ 前編
「おや、偶然ですね?田中先生、今お帰りですか?」 森技官がThe官僚様といった黒塗りのクラウンに寄りかかっている。運転席には運転手も座っていた。「偶然なわけがない!今何時だと思っている。午前三時なのだぞ」と言いたいけれども今夜の救...
tanpen 「気分は下剋上 BD・SP」おまけ中編
「祐樹が帰ってくる時間には勝手に目が覚める」と言っていた最愛の人を起こさないように細心の注意を払っていたが、ベッドルームに入ると最愛の人が半身を起こしていた。「祐樹お帰り」 今まで熟睡していたらしいのに、冴え冴えとした眼差...
tanpen 「気分は下剋上 BD・SP」おまけ後編・上
市販の胃薬がこんなにも高価だとは思ってもいなかったが、そもそも祐樹は風邪一つ引いたことがないので、薬の相場など全く知らない。(高ければ高いほど効果があるのか?)とも思った。しかし、それだと、森技官の偽薬効果、つまり、自然じねん薯...
tanpen 「気分は下剋上 BD・SP」おまけ後編・下
「ゆ…田中先生、呼び立ててしまって済まない。アッシュベリー先生から『田中先生と一緒に味わってください』というカードと共にこれが届いた」 執務室に入ると、最愛の人の笑顔が心を、そして、ミントグリーンのワイシャツと緑色と白のストライプ...
tanpen 「気分は下剋上」SP 執務室でコーヒーを 前編
夏輝の父・有瀬さんの手術の予定が決まったことを祐樹が夏輝に告げると、細い肩から重い荷物を下ろしたような表情でほのかに笑った。「ありがとうございます。執刀予定の香川教授にもお礼を言いたいんですけど、きっとご迷惑でしょうね……」 夏輝はそう...