tukimi

「気分は下剋上 月見2025」10

「はい?」 営業用の笑みを浮かべて返事をすると、いい年をした仲居さんは頬をほんのりと赤らめた。祐樹は女性からのこういう反応に慣れているが、全く喜ばしいことではない。久米先生に祐樹の本音を話せば、嫉妬と憎悪の念が強すぎて生霊になりそ...
aki

「気分は下剋上 ○○の秋」15

 ついさっき祐樹のカゴの中を見て最愛の人が少しだけ笑ったのも、シゲさんの解説を熱心に聞いて、毒のあるきのこだと分かったからに違いない。「山には慣れています」と豪語してきた手前恥ずかしかったが、最愛の人が満開の花のように笑っ...
「気分は下剋上 知らぬふりの距離」

「気分は下剋上 知らぬふりの距離」52

「医局内の医師ならそれこそ医局長の柏木先生や、それでも被害が続くようなら香川教授からの厳重注意で鎮火はするでしょう。香川教授はそこまでなさらないと思いますが、例の瞬間湯沸かし器のような教授の場合、僻地の病院に左遷されること...
月見2025【完】

「気分は下剋上 月見2025」9

「この裁縫セットの中に小さなハサミならありますよ。この旅館ならこのような物も用意されているのではないかという予想が当たりました。器用でない人が使う場合はこの糸を切るくらいしかできないでしょうが、貴方なら楽勝でしょう」 第二...
aki

「気分は下剋上 ○○の秋」14

「この山の中で、しめじが食べられるのですか?」 栗拾いがこのデートの目的だったが、栗に毒はないので、シゲさんがいるうちに、きのこを見分けてもらって食べるほうが優先順位も高いような気がした。「すみません。まだ食べていいしめじ...
「気分は下剋上 知らぬふりの距離」

「気分は下剋上 知らぬふりの距離」51

「こちらは入院患者さんの有瀬誠一郎のご子息の夏輝さんです。すっかり広瀬看護師と打ち解けたようですね。夏輝さん、こちらは医局長の柏木先生です」 柏木先生は一瞬怪訝そうな表情を浮かべた。医局長として入院患者の把握は職務の一環だ...
「気分は下剋上 知らぬふりの距離」

「気分は下剋上 知らぬふりの距離」50

 単に紳士的に振る舞おうとしているだけなのか、それとも……。しかし、妻の香織さんや夏輝という息子がいる。早計な判断は慎むべきだろう。ただ、確かに有瀬氏の病室に入ったときに、広瀬さんや三好看護師がいても淡々としていたなと思い...
◯◯の秋 2025【完】

「気分は下剋上 ○○の秋」13

「八木様のために先祖代々山を守ってる、八木と言います」 ご年配の男性は年季の入った帽子を脱いで挨拶してくれた。「初めまして。京都大学付属病院の香川と申します」 最愛の人は怜悧な口調とほのかな笑みで自己紹介をしている。「初め...
月見2025【完】

「気分は下剋上 月見2025」8

「この宿も素晴らしいな。お香の香りがどこからともなく漂ってきて、精神が澄んでいくような気がする。それに一輪挿しに飾られた、萩とお・みな・・えし・・の花が秋に相応しい繊細さだ……」 旅館のロビーに足を踏み入れた最愛の人は満足...
短編

「気分は下剋上 BD・SP」後編

 祐樹の愛車の後部座席は狭い。もともとこの車を買ったときには最愛の人しか乗せる積りはなかったので当然なのだが。華奢な身体の呉先生はともかく、森技官には窮屈だろうと思ってミラーを見ると案外穏やかな表情で身体をシートに預けて振動に身を...
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