「気分は下剋上 知らぬふりの距離]

「気分は下剋上 知らぬふりの距離」11

 家族控室には、スマホを弄りながらぽつんと佇む青年が一人いた。 他は事故の知らせを聞いて駆け付けた人たちがあちこちに集まり、小さな輪を作っていた。互いに肩を寄せ合い、不安を分け合うように。 誰とも言葉を交わすことなく輪の外...
「気分は下剋上」叡知な宵宮

「気分は下剋上 叡知な宵宮」18

 「鬼退治アニメ」の「黄色い少年」ならぬ「青年」の浴衣を着付けたことなどなかったかのように、最愛の人は満開の薄紅色の薔薇のような笑みを浮かべ、弾む足取りでいちご飴の屋台に向かっている。「祐樹、よく考えたのだが、りん...
「気分は下剋上 知らぬふりの距離]

「気分は下剋上 知らぬふりの距離」10

この作品には、『叡智な一日』をお読みの方にとって 「どこかで見覚えのある青年」が登場します。 本編とあわせてお楽しみください。  祐樹が「夏輝」と書いた該当箇所をタップすると、今度は呼び出し音が鳴っている...
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「気分は下剋上 叡知な宵宮」17

「どちらかというと、いちご飴ですね。愛らしい一口サイズですし――」 唇を薄紅色の耳朶に寄せた。「ホテルでの愛の交歓のあとは喉が渇くでしょう?その時に手軽に召し上がれるのは、いちご飴ではないでしょうか?」 色香の他に...
「気分は下剋上 知らぬふりの距離]

「気分は下剋上 知らぬふりの距離」9

 救急車のサイレンの音が近づいてきた。一台だけなのできっとあれが祐樹の担当する患者を乗せた車だろう。普通の人なら慌ただしさを感じるだろうが、祐樹は感覚が麻痺しているのか、(これから頑張るぞ!)という気持ちにしかなら...
「気分は下剋上」叡知な宵宮

「気分は下剋上 叡知な宵宮」16

「それが……たこ焼きは、表面は冷えていても中は熱々だということが多いです。救急救命室の凪の時間に久米先生が何度口の中に火傷を負ったか。それに懲りたらしく、たこ焼きではなくてお好み焼きにシフトしましたよ……」 大学病...
「気分は下剋上 巻き込まれ騒動」

「気分は下剋上 巻き込まれ騒動」最終話

「祐樹、このニュース速報……」 トレーにコーヒーを載せてリビングに軽やかに入ってきた彼も涼しげな眼を見開いている。「森技官がこのタイミングを狙って、白石志保にマスコミの目が集中するように仕向けたのでしょうね。ちなみに清川大...
「気分は下剋上」叡知な宵宮

「気分は下剋上 叡知な宵宮」15

「このたこ焼き、半分こにしませんか?」 さっきの串カツと、それから無料で添えられたキャベツも思いっきり食べた。最愛の人に「大阪人でもないのに、食べ放題とか無料という言葉に弱いのだな」と切れ長の目に月光のような笑みを...
「気分は下剋上 巻き込まれ騒動」

「気分は下剋上 巻き込まれ騒動」98

 マンションにはすぐ着いた。何しろ大学病院は徒歩圏内なので、森技官の足の怪我がなければそもそも車を出す意味もなかった。「気分転換にドライブでもしますか?」 祐樹としては、このまま部屋に帰りたいのが本音だったが、助手席の最愛...
「気分は下剋上 巻き込まれ騒動」

「気分は下剋上 巻き込まれ騒動」97

「あと、二ミリほど奥に入れるイメージで行うと完璧です」 祐樹の再度のアドバイスに真剣そのものといった呉先生が華奢な指を動かしている。「そうです。それが正しい動作、いえ手技です」 最愛の人も集中した様子で呉先生の指先...
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