「気分は下剋上 イルミネーション 2025」7

「気分は下剋上」イルミネーション 2025
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This entry is part 8 of 15 in the series 気分は下剋上 イルミネーション2025

「カニ、カニ!カニ!!」
 呉先生の頭の中にはカニしかないのではないかと思うほど、はしゃいでいる。その様子を珍しいものでも見るように最愛の人が静謐な表情で眺めている。あれほどヘリコプターの中でゴディバのタブレットとベビーカステラを食べたというのに、この細い身体のどこに入るのか不思議だった。
「部屋でいったん着替えてからイルミネーションを見に行きませんか?この辺りは夜間かなり冷え込むらしいので、食事のあとだと風邪をひくおそれもあるかと」
 森技官は「カニ!カニ!!」と子供のようにはしゃいでいる恋人を、愛おしそうに見ながら祐樹達に提案している。ヘリコプターを使ったので早く着いたが、ここは兵庫県の真ん中あたりだ。もう少し北上すればスキー場もある土地柄で寒さもひとしおなのだろう。
「そうですね。広大な敷地にイルミネーションが設置されているのですから、先に見に行きましょう」
 エレベーターの中で簡単な打ち合わせをした。祐樹も特に異存はなかったので三十分後にロビーで待ち合わせをして客室階で降りた。
「もっと混んでいるかと思ったのだが、そうでもないな……」
 軽やかに歩む最愛の人の足取りに合わせて廊下を歩んだ。
「そうですね。インバウンドもピークを過ぎたのかもしれないです。いや、このアクセスの悪さを考えると、そもそもインバウンドの効果があったのかも疑わしいですね」
 二人の客室にたどり着いてドアを開けた。
「え……!?この部屋で間違っていないですよね?」
 カードキーは祐樹が持っていたが、最愛の人も隣で客室番号を聞いていた。
「間違っていない。そもそも部屋を間違ったら鍵が開かないだろう?どうしたのだ?」
 祐樹の背後から顔をのぞかせた彼は、白皙の顔に朱を散らしたような色に変わっている。その反応はしごく尤もで、ダブルベッドが寝室に鎮座しているだけではなくて、ベルサイユ宮殿にあるような天蓋付きだった。
「これは完全に森技官に遊ばれていますね。動揺するのも癪に障るので、三十分後にロビーで会ったときには何事もなかったかのように振る舞いましょう」
 最愛の人も神妙そうに頷いていた。
「天蓋付きのベッド……、祐樹と何回か泊ったことはあるが、こうして紐を解けば……」
 しゃらりと音がしてベッドがベルベッドと思しき布で覆われた。彼はその中に入り、祐樹の腕を掴んで中へと誘ってくれた。そして始まるキスは舞台装置が揃っているせいか聖なる淫靡さだった。彼の柑橘系のコロンの香りが愛撫を誘っているような気がしてコートを身につけたままスーツのボタンを外し、糊のきいたワイシャツの下の素肌に触れた。深くなる口づけが厚い布に囲まれた空間に、淫らな水音がかすかに響いている。滑らかな歯列を舌で辿り、舌を強く絡ませた。と同時に、ツンと尖った右の胸先を指で摘まんで強く捻った。
「あ……っ」
 月の光のような淡い嬌声が合わさった唇から漏れているのも鼓膜に心地よく響いている。
「祐樹、この後の愛の行為は、散歩と夕食が終わってからな……」
 二人でこのホテルに来たならば、祐樹はこのままなし崩しに最愛の人をベッドに押し倒すだろう。しかし、森技官と呉先生の四人で来ている。今の最愛の人はやや顔が紅い程度だが、これはこの部屋を予約した森技官は当然寝室のベッドがどんなものかを把握している関係上、「そういう目的」のベッドに羞恥心を覚えたと「誤解」してくれるだろう。
「そうですね。これ以上貴方を乱れさせたいのはやまやまなのですが、そういう表情も私一人で独占したいので、泣く泣く諦めます。ああ、この尖り、服に擦れて辛くないですか?」
 祐樹が指で強く捻った紅い尖りが艶めいた光を放っている。そこは言うまでもなく、最愛の人の敏感な場所の一つだ。
「ワイシャツなら疼いたかもしれないな……。ただここは市街地よりも寒いと聞いていたので厚手のセーターを持ってきた。それを着れば大丈夫だろう」
 最愛の人はキスで濡れた唇を花が咲くように動かしている。……シャツとセーターの違いとは何だろうと一瞬だけ考えた。最愛の人のワイシャツはキチンとノリが効いている。だから擦れた場合にツキンとした悦楽が走るのだろう。その点セーターは布地が柔らかなのでその心配がないというほどの意味だろうと推測した。
「そろそろ出かける準備をしなくてはいけないですね」
 ホテルマンが部屋に運んでくれていたカバンを開けて祐樹もスーツを脱いだ。最愛の人は洗面所に行って顔を洗っていた。きっと頬の上気を冷ますためだろう。その後細く長い指を器用に動かして服を脱いでいる。新雪のような素肌に真っ赤な木の実のような胸の尖りが祐樹の目を射るようだった。このまま歯で噛んで舌で吸いたいと強く思ったがそれは後の愉しみとして取っておこう。必死に目を逸らして最愛の人と同じセーター姿になった。
「祐樹、マフラーも持っていったほうがいいだろう」
 ホテルの中にいると寒さは無縁だが、外は相当寒いらしいので最愛の人の心遣いが嬉しい。
「有難うございます。コートも手に持っていくとして……。冬は着るものも多くて、かさばりますね」
 客室を出て廊下を二人して歩いた。他の客とすれ違わないのは時間が中途半端なせいなのか、それとも呉先生がヘリコプターの中で力説していた箱モノ行政のなれの果てなのかもしれない。

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