「気分は下剋上 イルミネーション 2025」12

「気分は下剋上」イルミネーション 2025
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This entry is part 13 of 15 in the series 気分は下剋上 イルミネーション2025

「熱心な支持者は『なんであんな美人は特別扱い?しかも若い女』などと嫉妬のあまり支持をやめる可能性も高いです。無料押し活知事と呼ばれているほど、中年女性のファンが多いのです。何しろ、チケット代も不要ですし、知事が出没する場所はある程度、県のサイトで公開されています。兵庫県とその近郊に住んでいる女性が多いので、押し活は電車賃のみという非常に安価な負担で済みます。その押し活女性が、嫉妬のあまり押しを降りたらもっけの幸いです」
 最愛の人は赤いワインを一口飲んで寒さのせいかワインよりも紅い唇を開いた。
「祐樹、押し活とは何なのだ?」
 ごくごく小さな声で質問している。
「私もよく知りませんが、主にアイドルに使われる言葉だと認識しています。そのアイドルが全国ツアーをしたら全てのライブを見に行ったり、グッズを実用・観賞用・保存用の三つ買ったりします」
 最愛の人は驚いたように切れ長の目を開いている。
「……そんなに買うのか?全国も回って?その熱量は凄いな。私自身、アイドルに憧れたり好きになったりしないので知らなかった。生涯で憧れ、好きになったのは――祐樹ただ一人だ」
 最後の言葉はごくごく小さな声だったが、祐樹の耳には天上の音楽よりも美しく響いた。しかもイルミネーションが緑から青に変わる場所に二人は足を踏み入れたところだった。
「そのお言葉は、私が天国にいるような気がします。道もサファイアみたいですし。あいにく真珠の門はありませんが」
 まるで露を載せた薄紅色の薔薇のような笑みを浮かべていた最愛の人が「え?」という表情を浮かべ、静謐な風情で唇を開いた。
「聖書には、天国の門はパルティ・ゲート、つまり真珠の門だと記述されている。そしてその道は金だと書かれているな。ただ、西洋では聖書をモチーフにした文芸作品も多いのでサファイアだと書かれているものもあるので全くの間違いというわけでもない」
 いつもながらの歩く博物館のような知識に舌を巻いた。
「そうなのですね。私も国際公開手術で、キリスト教徒だと思しき医師たちと知り合いました。ですからそういう知識は必要ですよね。宗教が絡むと人間は怒りだす可能性が極めて高くなりますから。世界的に見て温厚だとされている日本人でも神社の鳥居にかかっているしめ縄を、外国人が鉄棒代わりにして遊んでいる動画が炎上し、身元まで特定されましたから。宗教問題は地雷ですよね……」
 そんな会話を二人で交わしていると森技官は一人演説を続けている。
「――画像を見る限り『ある年齢』の女性にはにこやかに握手する程度で一緒に物を食べることはないのです。また、ナッツが食べられないという事実を拡散すれば、『全てのものを美味しく頂いています』という定例会見で記者やYouTubeの映像を通して全国に発信した言葉が、嘘になりますよね。それだけで致命傷にはならないですが、若干のイメージダウンになると考えています」
 森技官は淡々と話しているが、その冷静さが逆に怖い。それより、森技官はアメリカンドッグを持て余しているのか先端だけを舐めている。しかもソフトクリームを食べるような感じで舌を出してペロペロとだ。そんなに揚げた油が美味しいのかと呆れながら見ていると歯で噛まずに側面に舌を這わせている。……昔話の猫の妖怪だったか、祐樹の記憶は曖昧だが、油を舐めるシーンがあったような気がする。「お前は猫の妖怪か?」と言いかけたとき、呉先生が思いっきり蔑んだ表情を浮かべて「へー!だからそんなに下手なんだよな。もっとさ、創意工夫しろよ。先端だってさ、舌を小刻みに動かすとかさ。オレがお前のソレで逝ったことがない、その事実を反省しろ!」
 ――呉先生の言葉でやっと森技官がアメリカンドッグをペニスに見立てて口戯?舌戯?をしていたことにやっと気づいた。森技官は呉先生の言葉に深く深く傷ついたらしく、イルミネーションの死角になった場所にとぼとぼと歩いていった。最愛の人の反応が気になってそちらに視線を転じると、彼は青色にライトアップされた林に見入っていた。どうやら森技官の嫌がらせは自爆で終わったらしい。
「ちょっと、アイツのところまで行って同居人にフォローしてきますね。すぐ戻ります」
 呉先生の視線の先を見ると森技官は光の当たらない場所で黄色いダンゴムシのように、身体を丸めていた。いつもの自信満々を絵に描いたようなエリート官僚ではなくどこか悲哀に満ちた姿だった。
「祐樹、森技官はどうしたのだ?」
 最愛の人が軽やかな足取りで祐樹に並んだ。
「それが、男性としての自信をどうやら失ったみたいです。私達でどうにかできる問題ではないので、呉先生に任せましょう」
 最愛の人はマフラーから花の芯のように伸びた首を傾げながらも頷いた。
「ちなみに、そんなに下手なのですか?」
 どうしても抑えきれない好奇心に負け、祐樹は呉先生に聞いてみた。

―――――

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 こうやまみか拝

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