「気分は下剋上 イルミネーション 2025」4

「気分は下剋上」イルミネーション 2025
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This entry is part 4 of 15 in the series 気分は下剋上 イルミネーション2025

「アメリカにいた時にデモ隊に行き会ったことがあった。彼らの主張はもっともだと思えるような類いのものだったが、あんなふざけた格好の人たちの言うことを真に受ける人などいないだろうと同僚が言っていた。確かに、目立てばいいという感じのコスプレや、普段町では歩けないような服を着ていたな。そしてその同僚いわく『あんなことをしても為政者に届かない。時間と労力の無駄だ』とのことだった。今回の件も、それと同様だろうな。『知事辞めろ』というシュプレヒコールが効果的なのは、その知事がしおらしい、あるいは市民の訴えに聞く耳を持つ人物に限られると思う。もう一年もの間、市民の声を黙殺している人の場合、効果は全くないと言わざるを得ないと思う。別の方法を考えるべきだろうな」
 最愛の人の言うとおりだろう。
「ああいうのは理解しようとしないほうがいいと思います。現実生活に影響を及ぼしかねない動きは黙って見ておいて、いざと言うときに対処する程度の接し方でいいと思うのです。私自身は、デモをニュースでしか見たことはないのですが、いい年をした中年から老年のかたが真っ赤な髪や緑にピンクに染めた髪で行列に加わっていましたね。主義主張よりも、頭の毛のインパクトのほうが強くて肝心の主張がほとんど入ってきませんでした」
 それはそうと、動画で聞く限りあんなに大音量で「知事辞めろ」と一時間も言っていてもまるっきり動じていないような気がする。元県議会議員が自死なさったという非常に重いことなのに、それも全く凝りない感じだ。これは不謹慎かもしれないが、大手コンビニの山椒味噌焼きだか何だかのCMを知事がプレゼンしたのを受けて記者が「亡くなった県議のお子さんの育英基金に寄付する予定はありますか?」という問いに「なさる方はなさればいいことです」とふざけたことを言っていた。そこで記者は「知事にとっては、子供の将来よりも山椒味噌焼きのほうが大切なのですね」と突っ込んでいたのは不謹慎だが笑ってしまった。
「不信任決議もだめ、声を上げるのもだめなのですよね。森技官ならお得意の権謀術数でどうやって切り崩すのでしょうか?」
 最愛の人は細い頤に細い指を添えていた。
「森技官のお得意の弱みを握って失職に持ち込むというのが最も可能性が高いな」
 祐樹はなるほどと思った。
「あ、森技官からのLINEです」
「私も来ている」
「『ホテル・ザ・ネスタ&スパ』のプランか……。スパも楽しみだが、ディナーブッフェも充実しているな。特にカニが美味しそうだ」
 最愛の人は花が綻ぶような笑みを浮かべている。
「しかし、集合場所が神戸空港ですね?なぜ、そんなところなのでしょうか?」
 祐樹の素朴な疑問に最愛の人は白い花のような笑みを浮かべて答えた。
「森技官は空からもネスタリゾートを見たいと思っているのだろう?だからヘリコプターを選んだのではないか?確か、あの辺りにヘリポートはないのでかなり歩くのは覚悟しないといけないのだが……」
 なるほど。官僚様の考えることはスケールが大きい。もしかして普通のヘリコプターではなくてオスプレイを用意したとしても森技官のことなので驚かないが、あれは確か市街地には着陸できないと何かで読んだ覚えがあった。
「二泊三日みたいですね。その分の着替えは持っていきましょうね」
 最愛の人も花を含んだような笑みを浮かべている。
「あ、教授、田中先生こちらです」
 呉先生は、もこもこのコートを着て手を振ってくれた。ボタンを全部外したら寝心地のいい毛布になるような気がする。最愛の人はオフホワイトのカシミヤのコートに青いカシミヤのセーターそしてオフホワイトのスラックスという出で立ちだ。祐樹はダウンのコートに黒いスラックスを身につけている。
「すみません。同居人は少々遅れるようなのです。仕事が立て込んでいるとかで。あのカフェで待っているようにとの伝言です」
 相変わらず森技官は多忙を極めているらしい。そもそもネスタやルミナリエに行けるかどうか分からないと言っていたので、遅刻したにせよ進歩といえるかもしれない。
「ネスタにはルミナリエのような屋台はない代わりにホットワインやクレープなど立って食べたり飲んだりするお店はあるそうですよ。確かフランクフルトや空揚げなども売っているようです」
 呉先生の説明に最愛の人はにこやかに「そうですか」と言っていたが、彼のことを世界で一番見てきた祐樹には微細な不満まで分かってしまう。彼の場合、りんご飴やたこ焼きといった屋台に絶対にある食品が好きだ。フランクフルトや空揚げを食べているところを見たことがない。
「しかし、ホテルの中ではカニなどが食べ放題なのですよね?そちらは物凄く楽しみです。ところでこの空港で待ち合わせしたのはヘリコプターに搭乗予定だからですよね?」最愛の人が確かめている。ヘリコプターを飛ばすには大金がかかることは知っていたが森技官は単なる遊びにも関わらず何らかの口実をつけて飛ばす許可を貰ったに違いない。あまり突っ込みすぎると藪を突いて蛇を出しそうにになるので詳しく聞くのは自粛した。

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体調不良で書くべき小説が大渋滞を引き起こしています。
「知らぬふりの距離」は季節的に急がないので、
「ハロウィン2025」「イルミネーション」を先に書きます。
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