ナツキ再登場「叡知な一日」の後

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「気分は下剋上 知らぬふりの距離」63

「香川教授、兵頭さんの件ですが、抑うつ状態が悪化しました。目に光がなく、呼びかけにも全く反応しません」 この場にいる看護師たちにも十分聞こえるように大きな声を出した。『分かった。すぐに下りていく。兵頭さんの周りには誰かついているの...
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「気分は下剋上 知らぬふりの距離」62

「彼は美山みやま総合医療センターにいます。名前は山敏弘です。マウンテンの山に、「とし」は、敏感の敏、「ひろ」は弓偏にカタカナのムのような字です。しかし、それが何か?」 黒木准教授は不思議そうに。太い首を傾げた。「まだ計画中なのでお...
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「気分は下剋上 知らぬふりの距離」61

「私が医局内で久米先生に行っていることはパワハラにあたるのでしょうか?」 不安になってきたのでこの際最愛の人に聞いてみよう。祐樹は久米先生にパワハラをしている自覚はなく、むしろ愛のあるイジりだと思っている。そして久米先生も、わざわ...
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「気分は下剋上 知らぬふりの距離」60

 他の科はどうか知らないが、香川外科の場合、ほとんどの患者さんが彼の手技を慕って国内外から集まってくる。広瀬看護師たちに対してセクハラをした場合、その手術が受けられないという結果になるのだから、「読んでなかった」「知らなかった」と...
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「気分は下剋上 知らぬふりの距離」59

「私としては、不定愁訴外来の呉先生を推薦します。まだ若いですが大変優秀な精神科医ですよね。――なんでも血が苦手だとか。手術そのものにアレルギーを示されるかもしれないです。そういう点は我々、特に香川教授の精神科の卓越した知識...
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「気分は下剋上 知らぬふりの距離」58

 精神科は、当たり前だが精神病を患った人が入院するので、「錯乱した患者に殴りかかられ、眼鏡を壊された医師など珍しくない」と呉先生に聞いた。しかし、望んでもいないのに、局部を触られていい気持ちがするわけもないことくらいは想像...
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「気分は下剋上 知らぬふりの距離」57

 最愛の人の電話の相手は病院長ではなさそうだが、病院上層部の人間だということが分かった。そして内科の内田教授・小児科の浜田教授のように普段から親しくしている人ではないのは口調から分かる。黒木准教授は多分気付かないほどの微か...
「気分は下剋上 知らぬふりの距離」

「気分は下剋上 知らぬふりの距離」56

 もしかして、森技官が暗躍しているのではないかと思った。森技官も恋人のひいき目ではなく、呉「教授」を切望している。森技官は徹底したリアリストなので、恋人とはいえ私情で推すことはしないと分かっている。そして多忙を縫って何らか...
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「気分は下剋上 知らぬふりの距離」55

「私が主治医を務めている兵頭さんの件なのですが」 黒木准教授は流石、香川教授の女房役を自他ともに認めているだけあって、即座に名前と顔が一致したらしい。祐樹などは自分が主治医か執刀医でない患者さんの名前と顔は一致しないというのに、こ...
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「気分は下剋上 知らぬふりの距離」54

 やっとエレベーターの扉が開いた。通勤時間の電車もかくやというほどの混雑ぶりなのはいつものことだ。しかも車いすや松葉づえの患者さんも乗っているので、車椅子対応の広いエレベーターですら人であふれている。祐樹と柏木先生、そして...
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