ナツキ再登場「叡知な一日」の後

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「気分は下剋上 知らぬふりの距離」73

「夏輝さん、お父さまのことで大変なときにお時間を割いていただきありがとうございました。貴重な意見を伺ったので、絶対にこの病院からセクハラを根絶させます」 夏輝は、祐樹が深く頭を下げると「とんでもない」と言わんばかりに、手を...
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「気分は下剋上 知らぬふりの距離」72

「静謐な品格ですか……。准教授が香川教授にこれほど尽くしているのは、そういう理由があるのかもしれませんね」 祐樹は、もっともらしく言いながら、ここにいるのが久米先生だったら、「ナースステーションにお菓子がたくさんあるようで...
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「気分は下剋上 知らぬふりの距離」71

「すみません。お二人の話が耳に入ってきてしまいまして」 黒木准教授は頭を下げた。黒木准教授が会話を聞いていたこと自体はさほど問題ではない。それよりも、彼がゲイバー「グレイス」に通っているかどうかのほうが気になる。最愛の人と出会う前...
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「気分は下剋上 知らぬふりの距離」70

「あのう、ナースステーションってだいたい何人の看護師さんがいるんですか?」 夏輝の質問に少し面食らった。在籍者数なのか、それとも今いる看護師の数だろうか?「三好看護師にお礼をされるのですよね。時間によりますが、最大で十五名です」 ...
「気分は下剋上 知らぬふりの距離」

「気分は下剋上 知らぬふりの距離」69

 そのメンズナース達の厚意は受け取ったが、果物かごの中身はどうでもいい。「久米先生、ほんのお礼の気持ちです。メロンやマンゴーなど何でも好きなだけ召し上がってください」 祐樹の言葉に久米先生は、歓喜の踊りを舞うカバのようだっ...
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「気分は下剋上 知らぬふりの距離」68

 そんな祐樹の前に柏木先生が立っていて、「お疲れ様」というように肩をポンポンと叩いた。「田中先生、久米先生のぜい肉のおかげで命拾いしたって!?やっぱり抑うつ患者は何をするか分からないから怖いよな」 柏木先生も精神科に苦手意識を持っ...
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「気分は下剋上 知らぬふりの距離」67

「臨時教授会でセクシュアルハラスメント禁止条項は当然として、パワーハラスメントの厳禁についても明確に通します。特に真殿教授には、強く釘を刺します」 怜悧な声が凛と響いた。川口さんと西さんは、土下座せんばかりの勢いで頭を下げている。...
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「気分は下剋上 知らぬふりの距離」66

 兵頭さんは、精神科の閉鎖病棟よりもよく考えられているというこの病室のベッドの上に、再び「虚無のお地蔵さん」のように座っていた。祐樹は、普通の病室ではシーツは取り外し可能な仕組みになっているのに、ここではベッドマット――詳しい名称...
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「気分は下剋上 知らぬふりの距離」65

「これはすごいですね。防弾ガラスで割れない仕組みですね。トイレも固定式で、便座のフタもありません。患者さんは驚くべき力を発揮しますからね。便座のフタだって軽々と取ってしまって武器にするケースも実際経験しています。カーテンも...
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「気分は下剋上 知らぬふりの距離」64

「田中先生、この患者さんをどの病室にお連れすればいいのですか?」 ポロシャツ姿の男性が兵頭さんの腕をがっしりと掴んでいた。その腕の太さは、広瀬看護師のウエストくらいだった。祐樹のことを知っているということは病院関係者だろうが、あい...
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