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「気分は下剋上 知らぬふりの距離」15

「そりゃそうですよね。こんなお堅い職場で、そこまでカミングアウトしたら大変なことになってしまうと僕も思います。それで、香川教授や田中先生と僕はどうやって知り合ったかと突っ込まれたら、どう返せばいいですか?」 夏輝も...
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「気分は下剋上 知らぬふりの距離」14

 夏輝はスマホを見て「まだ既読がついてない!母さん、吞んだくれている場合かよ」と苛立った感じで独り言めいた感じで祐樹にも状況を伝えてくれていた。 吉田医師は先ほど祐樹に詰め寄った、ユズルという人のお母さまに説明をし...
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「気分は下剋上 知らぬふりの距離」13

「すみません。ユズルさんのお母さまは下手をすると、ここにまで押しかけそうな勢いでしたので……。有瀬さんのご子息にはきちんと許可を得て離れました。しかし、配慮不足だった点はお詫びします」 頭を下げた祐樹に杉田師長は何...
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「気分は下剋上 知らぬふりの距離」12

「そうみたいですね。今は容態が安定している父よりも、もっと深刻なかたがたくさんいらっしゃる……」 夏輝は自然に声を落としている。「グレイス」でも感じた、周囲の空気を読む繊細さ。今もまた、命の境界線にいる患者さんやそ...
「気分は下剋上 知らぬふりの距離]

「気分は下剋上 知らぬふりの距離」11

 家族控室には、スマホを弄りながらぽつんと佇む青年が一人いた。 他は事故の知らせを聞いて駆け付けた人たちがあちこちに集まり、小さな輪を作っていた。互いに肩を寄せ合い、不安を分け合うように。 誰とも言葉を交わすことなく輪の外...
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「気分は下剋上 知らぬふりの距離」10

この作品には、『叡智な一日』をお読みの方にとって 「どこかで見覚えのある青年」が登場します。 本編とあわせてお楽しみください。  祐樹が「夏輝」と書いた該当箇所をタップすると、今度は呼び出し音が鳴っている...
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「気分は下剋上 知らぬふりの距離」9

 救急車のサイレンの音が近づいてきた。一台だけなのできっとあれが祐樹の担当する患者を乗せた車だろう。普通の人なら慌ただしさを感じるだろうが、祐樹は感覚が麻痺しているのか、(これから頑張るぞ!)という気持ちにしかなら...
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「気分は下剋上 知らぬふりの距離」8

「今日は搬送されてきた患者さんがいなかったのはラッキーでしたね」 救急救命室にやや遅れて入った祐樹たちだったが、皆が手持ち無沙汰といった様子で、最愛の人が杉田師長にうまく取りなしてくれたのか、怒鳴られることはなかった。医療...
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「気分は下剋上 知らぬふりの距離」7

「え?DVなんですか……。それって離婚の理由になりますよね……?」 久米先生は、風船を思わせるまるっとした身体から空気が抜けたような大きなため息を漏らしている。「まだ結婚していないので離婚というよりも破局ですよね。...
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「気分は下剋上 知らぬふりの距離」6

 久米先生は、捨てられた子犬のような表情で祐樹を見ている。そんな目で見ても絶対に拾ってやらないぞ、と思いつつため息で答えた。「『悪気はない』と岡田看護師に言ってしまいましたか?」 最愛の人が久米先生に確認するように聞いてい...
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