「気分は下剋上 巻き込まれ騒動」

maki

「気分は下剋上 巻き込まれ騒動」最終話

「祐樹、このニュース速報……」 トレーにコーヒーを載せてリビングに軽やかに入ってきた彼も涼しげな眼を見開いている。「森技官がこのタイミングを狙って、白石志保にマスコミの目が集中するように仕向けたのでしょうね。ちなみに清川大...
maki

「気分は下剋上 巻き込まれ騒動」98

 マンションにはすぐ着いた。何しろ大学病院は徒歩圏内なので、森技官の足の怪我がなければそもそも車を出す意味もなかった。「気分転換にドライブでもしますか?」 祐樹としては、このまま部屋に帰りたいのが本音だったが、助手席の最愛...
maki

「気分は下剋上 巻き込まれ騒動」97

「あと、二ミリほど奥に入れるイメージで行うと完璧です」 祐樹の再度のアドバイスに真剣そのものといった呉先生が華奢な指を動かしている。「そうです。それが正しい動作、いえ手技です」 最愛の人も集中した様子で呉先生の指先...
maki

「気分は下剋上 巻き込まれ騒動」96

「教授のおっしゃる通りです。八十代の高齢者の価値観として『働かざる者食うべからず』という共通認識があり、勤労をしていない息子を世間の目から何としても隠そうとする人が多いです。昔のように地域のコミュニティが機能していない市町...
maki

「気分は下剋上 巻き込まれ騒動」95

「愛国運動は言論の自由の範囲内ですから、結構だと思うのです。しかし、ネットの中では偉そうに振る舞いながら、税金は消費税しか払わず、勤労の義務も果たさない人間を腹立たしく思っています。清川大臣もそういう勤労の義務を果たさない...
maki

「気分は下剋上 巻き込まれ騒動」94

「他でもない貴方にそう言っていただけて、本当に嬉しいです」 最愛の人の、誇らしく頼もしそうな眼差しと視線が交わる。その一瞬に、言葉よりも深いものが伝わった気がした。 エレベーターに乗り込むと、森技官がヤクでもキメているよう...
maki

「気分は下剋上 巻き込まれ騒動」93

「終わりました」 祐樹にとってこの程度のことは、朝飯前だ。呉先生は森技官の顔を心配そうに一瞥し、頭の中で祐樹の動作を反復しているような真剣な表情を浮かべている。「田中先生、本当にありがとうございます。杉田師長ですよね?この...
maki

「気分は下剋上 巻き込まれ騒動」92

「ちっ!あの永遠の子供の、ワガママ爺さん!ま、いいわ。どうせ暇だし。どこに打つの?もちろん、田中先生が担当するのよね?」 舌打ちのあとで、テキパキと聞いてきた。最愛の人はツバメのように身をひるがえして車に戻った。森技官と呉...
maki

「気分は下剋上 巻き込まれ騒動」91

 祐樹は今、救急救命室がどんな状況なのか当然把握できていない。最悪の場合、血が床一面を覆い、臓器と血の臭いで野戦病院さながらの状況も充分あり得る。 森技官はそのどちらも生理的に無理で、かつて最愛の人と訪れた城下町では珍しい...
maki

「気分は下剋上 巻き込まれ騒動」90

 8050問題について祐樹はそこまで深く考えてはいなかったのは、専門が異なるせいだろうか?「なるほど、出来るなら森技官について行って、精神科医として意見を具申したら如何ですか?藤宮さんがあれほど取り乱した声をしていたという...
タイトルとURLをコピーしました