halloween

　旧館は、この大学病院が設立されたときの本館だったこともあり、由緒と威厳を備えた建物だ。祐樹は来るたびに感心して見上げるのだが、今日はそんな心の余裕はない。ただ、すっかり時代の波に取り残された建物のため、人の出入りが極端に少ない。...

「『だめです』という言葉だけは、はっきりと聞こえた。それ以外はよく聞き取れなかったが、否定的な寝言だったことは確かだ」　その怜悧な声には、わずかながら案ずるような響きが混じっていた。それよりも、その程度の寝言で本当によかったと心の...

　今、艶かな素肌を目にすれば最愛の人の貴重な睡眠時間を削って三度目の愛の交歓になだれ込んでいくことはは必至だった。「貴方のスーツやネクタイを買いに行くとき、お供したことがあったでしょう？」　最愛の人は「教授職として無難だから」とい...

「呉先生をハロウィンの仮装に誘うだけなら私だけでも大丈夫だと思うのです。今夜川口看護師が快諾してくれたでしょう？皆がしているというのは、心のハードルを下げますからね。しかし、呉先生を浜田・内田教授へのお披露目を兼ねていますよね、来...

「祐樹、今夜もものすごく感じた。ほら、まだ手足が愛の交歓の余韻で震えている」　最愛の人が望むので繋がりは解いたものの、後始末はしていない状態で腕枕をした。祐樹の手で乾かした髪の毛も、再び汗の雫を宿らせているのが情交のあとという感じ...

【ハロウィン本編とは無関係の恋人時間──川口看護師と別れたあとの時系列です】 ―――――――――― 「いいですよ……」　祐樹は、耳朶を甘く噛みながら指の動きより繊細かつ大胆に動かした。彼の...

【ハロウィン本編とは無関係の恋人時間──川口看護師と別れたあとの時系列です】 「ベッドがいいな。なにしろ祐樹に愛されやすいし動きやすいので……。今夜は十分に時間があるので、存分に愛してくれ...

このお話は、川口看護師と別れた直後の時系列にあたります。 ハロウィンの催し物とは直接関係のない、恋人モードの “日常パート” のため、 ナンバリングを分けております。 　 　帰宅した後に祐樹...

　説得が上手くいって本当に良かった。確かにあのキャラクターの髪型は「自分で切った」と説明されても納得するレベルだ。「そういうところは全く問題ないです。カツラを用意してくれますし、小児科の看護師がメイク係をしてくれますよ」　祐樹が告...

　祐樹がホットコーヒーのＬを選んだのは川口看護師がアイスコーヒーのＬだったからで、我ながら子供っぽいなと苦笑してしまう。ついつい張り合ってしまった。それにしても最愛の人は川口看護師の見事な筋肉を褒めていることが心に棘とげのようにチ...