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「気分は下剋上 ○○の秋」17

 そこまで親切にしてくれるのは八木「様」に代々仕える家だからだろう。そういう家がまだ残っているのは京都という土地柄なのか、それ以外でも旧家では珍しくないのかまでは祐樹も知らない。天皇家御用達と書かれている有名な「虎屋」とい...
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「気分は下剋上 ○○の秋」16

「この辺りに自然じねん薯じょもありますよね?それを近日中に掘りに来たいのです。もちろん、八木さんの許可は取ります。私達ではどこに埋まっているのか分かりません。シゲさんが目印をつけて下さることは可能でしょうか?」 祐樹はシゲ...
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「気分は下剋上 ○○の秋」15

 ついさっき祐樹のカゴの中を見て最愛の人が少しだけ笑ったのも、シゲさんの解説を熱心に聞いて、毒のあるきのこだと分かったからに違いない。「山には慣れています」と豪語してきた手前恥ずかしかったが、最愛の人が満開の花のように笑っ...
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「気分は下剋上 ○○の秋」14

「この山の中で、しめじが食べられるのですか?」 栗拾いがこのデートの目的だったが、栗に毒はないので、シゲさんがいるうちに、きのこを見分けてもらって食べるほうが優先順位も高いような気がした。「すみません。まだ食べていいしめじ...
◯◯の秋 2025【完】

「気分は下剋上 ○○の秋」13

「八木様のために先祖代々山を守ってる、八木と言います」 ご年配の男性は年季の入った帽子を脱いで挨拶してくれた。「初めまして。京都大学付属病院の香川と申します」 最愛の人は怜悧な口調とほのかな笑みで自己紹介をしている。「初め...
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「気分は下剋上 ○○の秋」12

「神戸の六甲山にドライブに行ったときもイノシシを見ましたよね。うり坊は小さくて可愛かったですが、成体は……」 最愛の人も描いたように綺麗な眉を寄せている。祐樹の言いたいことを即座に推察したのだろう。祐樹と同じ、いやそれ以上の頭脳を...
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「気分は下剋上 ○○の秋」11

「白の鉢巻か……。一応干瓢かんぴょうも考えたのだけれども、真っ白にはならなかったので諦めた。他に白くて巻くことが出来る食材はあるだろうか?」 最愛の人が作ってくれる最高に美味しいお節料理の昆布巻きにも干瓢が使われているが茶...
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「気分は下剋上 ○○の秋」10

「焼き栗?祐樹と行った花火大会の屋台に『天津あまつ甘栗あまぐり』が売っているのを見た覚えはあるが、りんご飴に気を取られて結局買っていないな」 きのこの山を弾む指先で摘まんで口に入れた最愛の人の無邪気な笑みを見ながら、「あま...
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「気分は下剋上 ○○の秋」9

 無邪気な弾んだ声が車内を春色に染めていくようだった。几帳面な彼が珍しくキッチンのテーブルに置きっぱなしにしていた「遠足のお菓子リスト」は、祐樹に見せるためではないのだろう。 あの夜キッチンに足を運んだのは急に喉が渇いたからだった...
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「気分は下剋上 ○○の秋」8

「祐樹は軍手だけで良いのか?」 彼が描いたように綺麗な眉を寄せている。軍手だと心もとなく思ったに違いない。当たり前だが手を始めとして身体の怪我を負ってしまえば仕事に差し支える。「物心ついた時から山や海を走り回っていましたか...
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