月見2025【完】

tukimi

「気分は下剋上 月見2025」15

「博物館やハリー・ウィンストンといった法人が持つ場合には別にいいと思いますが個人で持つと呪われるのでしょうか?」 二人で行ったスミソニアン博物館展の説明書きに書いてあったことを思い出しながら口にした。ちなみに祐樹は無神論者...
tukimi

「気分は下剋上 月見2025」14

 中秋の名月近くの土日で、お出かけデートではなく、自宅でまったり過ごすときに最愛の人は月見だんごを作ってくれるがだん・・ご・部分は白だった。京都ではそれが当たり前だと思っていたに違いない。そしてこの旅館には関東の人も来るの...
tukimi

「気分は下剋上 月見2025」13

「生半可な知識だととんでもないことになるそうだ。日本酒については聞いたことがないが、遠藤先生が料亭に行った際、「この料理にはこのワインが合うだろう」と注文したらしい。しかし、和食は隠し味があるだろう?そのせいで、全くワイン...
tukimi

「気分は下剋上 月見2025」12

「こういう鯉って買ったら高いのですよね?」 祐樹が贈ったまだ青い紅葉を嬉しそうに見ていた最愛の人は驚いた表情で祐樹の目を見ている。先ほどまで「詩人」と言われてはいたが、好奇心の赴くままに俗な質問をしてしまい、興をそいだかも...
tukimi

「気分は下剋上 月見2025」11

「このお菓子が売っていた土産物コーナーは旅館にありがちなフロント近くではなくて、奥まったところにありました」 小さな箱を最愛の人に渡し、祐樹は、最愛の人が折ってくれた精緻な紅葉の折り紙をそっと手の上に載せて眺めた。見れば見るほどよ...
tukimi

「気分は下剋上 月見2025」10

「はい?」 営業用の笑みを浮かべて返事をすると、いい年をした仲居さんは頬をほんのりと赤らめた。祐樹は女性からのこういう反応に慣れているが、全く喜ばしいことではない。久米先生に祐樹の本音を話せば、嫉妬と憎悪の念が強すぎて生霊になりそ...
tukimi

「気分は下剋上 月見2025」9

「この裁縫セットの中に小さなハサミならありますよ。この旅館ならこのような物も用意されているのではないかという予想が当たりました。器用でない人が使う場合はこの糸を切るくらいしかできないでしょうが、貴方なら楽勝でしょう」 第二...
tukimi

「気分は下剋上 月見2025」8

「この宿も素晴らしいな。お香の香りがどこからともなく漂ってきて、精神が澄んでいくような気がする。それに一輪挿しに飾られた、萩とお・みな・・えし・・の花が秋に相応しい繊細さだ……」 旅館のロビーに足を踏み入れた最愛の人は満足...
tukimi

「気分は下剋上 月見2025」7

「それは、個人の能力や働き方への意識など様々な要因が絡み合いますので一概には言えません。フリーランスの医師は自営業者と同じで、手術のオファーが来ないと収入は途絶えます。ただ、執刀のギャラは言い値らしいですね」 久米先生だけ...
tukimi

「気分は下剋上 月見2025」6

 それでも祐樹や柏木先生が久米先生見捨てないのは愛嬌がある点と、そして何より外科医としての才能が素晴らしいからだ。「美味しい食事と、世界で最も美味なコーヒーありがとうございました。温泉も楽しみです」 ごちそうさまと言った後...
タイトルとURLをコピーしました