「気分は下剋上」叡知な宵宮

yoimiya

「気分は下剋上 叡知な宵宮」26

 理知的で端整な顔にやや硬質な微笑を浮かべた、よそ行きの顔の最愛の人の表情は熱意にあふれる心臓外科医という感じではないが、読者に安心感を与えるには充分だった。こうして祐樹とデートしているときには無垢で無邪気な笑みを...
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「気分は下剋上 叡知な宵宮」25

「器物損壊罪は親告罪といって、その物の所有者しか被害を警察に報告できないのだ。殺人罪などは、たとえばご遺体が見つかると警察は動くだろう?それは親告罪ではないからだ」 最愛の人はすっかり落ち着きを取り戻した笑みを花の...
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「気分は下剋上 叡知な宵宮」24

 え?と思って最愛の人が見ている方向に視線を遣った。弧を描いて宙に飛ぶスマホが祐樹へと飛来している。それもかなりの速度で。反射的に身を動かすよりも早く、最愛の人が両手でキャッチしてくれた。「本当に……ありがとうござ...
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「気分は下剋上 叡知な宵宮」23

 ホテルが見えたと同時につないだ手を祐樹は名残惜しげに離した。近づくにつれてホテルのエントランスが異様な雰囲気になっていた。笑顔が地顔のようなホテルマンたちも厳しい表情で、五人も玄関前に立ちはだかっていた。浴衣姿や...
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「気分は下剋上 叡知な宵宮」22

本話は濃いめの描写を含みますが、行為そのものには至っておりません。 「ああ、お好み焼きも本当に美味しかった!それにあのマヨネーズの幾何学模様もまさに神業だったな」 最愛の人が咲き切った紅薔...
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「気分は下剋上 叡知な宵宮」21

 一度だけ祐樹は最愛の人に「包帯問題」を語った覚えがある。卓越した記憶力を持つ最愛の人はそれを覚えていてくれたらしい。「そうです。包帯だけで、補助具を使わずあのように巻くのは、ほぼ不可能ですよね。しかも『百鬼夜行』...
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「気分は下剋上 叡知な宵宮」20

「祐樹、気になったのは?」 最愛の人はすぐそばにあった屋台へと下駄の音も軽やかに足を動かしている。「祐樹、この銘柄がお気に入りだったよな?」 お揃いのブラックコーヒーの一つを渡してくれた。指先がかすかに触れ合い、薄...
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「気分は下剋上 叡知な宵宮」19

 ただ、一度ホテルに入ったら、扇型の部屋に行って、愛の交歓になだれこむのは必至だ。花火が上がる時間までこの屋台と、人々の喧騒、そしてソースや油、そしてりんご飴の甘い香りが混ざった熱気のある空気を楽しみたい。「ブラッ...
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「気分は下剋上 叡知な宵宮」18

 「鬼退治アニメ」の「黄色い少年」ならぬ「青年」の浴衣を着付けたことなどなかったかのように、最愛の人は満開の薄紅色の薔薇のような笑みを浮かべ、弾む足取りでいちご飴の屋台に向かっている。「祐樹、よく考えたのだが、りん...
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「気分は下剋上 叡知な宵宮」17

「どちらかというと、いちご飴ですね。愛らしい一口サイズですし――」 唇を薄紅色の耳朶に寄せた。「ホテルでの愛の交歓のあとは喉が渇くでしょう?その時に手軽に召し上がれるのは、いちご飴ではないでしょうか?」 色香の他に...
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