kouyamamika

月見2025【完】

「気分は下剋上 月見2025」5

「この旅館か。雑誌に『中秋の名月に行きたい旅館 トップ5』としてランクインしていたな」 最愛の人はビジネスパーソン向きの経済雑誌を読んでいるのは知っていた。おそらくその雑誌に載っていたのだろう。「そうなのですか?具体的にど...
「気分は下剋上 知らぬふりの距離」

「気分は下剋上 知らぬふりの距離」46

「有瀬さん、お加減いかがですか?」 夏輝の父・有瀬誠一郎氏の主治医として病室のドアを形ばかりノックしてスライドさせた。ベッドに半身を起こしていた有瀬氏は祐樹をちらっと見た後、ドアの向こうに誰かがいるように視線をさまよわせている。「...
◯◯の秋 2025【完】

「気分は下剋上 ○○の秋」9

 無邪気な弾んだ声が車内を春色に染めていくようだった。几帳面な彼が珍しくキッチンのテーブルに置きっぱなしにしていた「遠足のお菓子リスト」は、祐樹に見せるためではないのだろう。 あの夜キッチンに足を運んだのは急に喉が渇いたからだった...
月見2025【完】

「気分は下剋上 月見2025」4

 最愛の人は部下思いなので、真っ先に久米先生の話題が出てくると祐樹は予想していた。しかし普段以上に食べるのが早い彼はよほどお腹がすいていたのだろう。「執刀経験を積ませたほうがいいと思いますが、手術室はキャパオーバーですし、...
「気分は下剋上 知らぬふりの距離」

「気分は下剋上 知らぬふりの距離」教授視点27

「私はまだ大丈夫ですが、貴方は眠そうですよ。明日も仕事なのでお休みになったほうがいいかと思います」 祐樹の低い声が夜も更けたキッチンにしめやかに響いた。「そうだな。祐樹が帰宅する午前三時は眠りが自然と浅くなって帰宅した気配を嬉しく...
sira

「気分は下剋上 知らぬふりの距離」45

 困ったように祐樹を見、頷きを返すと今度は呉先生の表情を確かめている。呉先生も淡いスミレ色の笑みを浮かべているのを確かめた夏輝は真剣な表情に変わった。それぞれの反応をうかがってから決める点が「空気を読む」夏輝の本領発揮とい...
◯◯の秋 2025【完】

「気分は下剋上 ○○の秋」8

「祐樹は軍手だけで良いのか?」 彼が描いたように綺麗な眉を寄せている。軍手だと心もとなく思ったに違いない。当たり前だが手を始めとして身体の怪我を負ってしまえば仕事に差し支える。「物心ついた時から山や海を走り回っていましたか...
月見2025【完】

「気分は下剋上 月見2025」3

「田中です。お呼びにより参りました」 数えきれないほど来ている最愛の人の教授執務室のドアをノックした。教授執務階の廊下は絨毯もふかふかだったが、行きかう教授はともかく叱責のために呼び出された医師の顔は悲劇的な表情だった。祐樹の前を...
sira

「気分は下剋上 知らぬふりの距離」教授視点26

「彼は主役を演じているだろう?私もよく知らないが、主演俳優は映画を成功させるために俳優さんやスタッフとの仲が円滑になるように気を配らないといけないらしい。だから、超豪華なトレーラーに『仲が険悪だな』とか『この人達はよく頑張っている...
sira

「気分は下剋上 知らぬふりの距離」44

「そういえば、パンチパーマと言うのですか?ドラマの暴力団の構成員の髪型なのですが……、ああいうのも学校で習うのですか?」 夏輝はリスのような風情で首を傾げているのも年相応の無邪気さだ。「え?授業では習わないですよ。でも、強いカール...
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