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「気分は下剋上 叡知な宵宮」5

「もう屋台の設営をしているのだな……」 アスファルトの道路には陽炎かげろうが揺れているのに、最愛の人の声は、鈴の音のように涼やかに弾んでいた。「そうですね。屋台もお祭りに合わせて全国を移動するらしいですよ。今は花火大会の季...
sira

「気分は下剋上 知らぬふりの距離」7

「え?DVなんですか……。それって離婚の理由になりますよね……?」 久米先生は、風船を思わせるまるっとした身体から空気が抜けたような大きなため息を漏らしている。「まだ結婚していないので離婚というよりも破局ですよね。...
「気分は下剋上 巻き込まれ騒動」【完】

「気分は下剋上 巻き込まれ騒動」87

「なるほど、恐怖政治ですか?医局員を締め上げれば締め上げるほど反発は大きくなるのです。田中先生、梶原先生と早急に知り合いにならなければなりませんね。また、清水研修医は腹も据わっていそうな人ですので、一度お会いしたいです」 ...
「気分は下剋上 巻き込まれ騒動」【完】

「気分は下剋上 巻き込まれ騒動」86

「え?ウーバーイーツに暗証番号が必要なのですか?アプリで見ていらっしゃいますよね?そこに書いてあるのではないでしょうか?」 どうやら配達員と鉢合わせしたに違いない。森技官はマンションの一階まで帰ってきたのだろう。「え?森技...
sira

「気分は下剋上 知らぬふりの距離」6

 久米先生は、捨てられた子犬のような表情で祐樹を見ている。そんな目で見ても絶対に拾ってやらないぞ、と思いつつため息で答えた。「『悪気はない』と岡田看護師に言ってしまいましたか?」 最愛の人が久米先生に確認するように聞いてい...
「気分は下剋上 巻き込まれ騒動」【完】

「気分は下剋上 巻き込まれ騒動」85

 今の祐樹に出来ることは、精神科の医局の情報を清水研修医から聞き出して、森技官が帰ってきた時に補足情報を引き出す程度だ。『ああ、あの二人ですか。患者さんではなくて、老害の顔色をうかがっているだけです。老害が『カラス...
「気分は下剋上 知らぬふりの距離」

「気分は下剋上 知らぬふりの距離」5

「薔薇の花束や、この百合に込められた悪意は私でも説明出来ますが、未来の嫁姑問題に関しては、正直自信がありません。独身者には荷が重いですし、説得力にも欠けます。そういうのに詳しいのは柏木先生ではないでしょうか?祐樹、...
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「気分は下剋上 叡知な宵宮」4

 仏壇仏具だと、祐樹の実家にあるお仏壇に灯す細いロウソクしか売っていないような気がする。あんな小さいロウソクだと彼の紅色に染まった艶やかな肌は少ししか拝めない。「すみません、キャンプに行きたいのですが、防災...
「気分は下剋上 巻き込まれ騒動」【完】

「気分は下剋上 巻き込まれ騒動」84

『それで、いよいよ例の先生が決起じゃない、決心を固められたということですね』 清水研修医の声は弾んでいるが、固有名詞を使わないという細やかな配慮もきっと清水病院長の帝王教育の賜物だろう。何しろ清水病院長は、京都一の...
「気分は下剋上 知らぬふりの距離」

「気分は下剋上 知らぬふりの距離」4

「それで、祐樹と私に何かご用ですか?」 長岡先生の個室のある階は人通りが極端に少ない。教授執務階だと教授に呼び出された医師が、うなだれたり真っ青な顔でドアの前に立っていたりする。彼女は最愛の人が、凱旋帰国し...
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