最愛の人が、上下に肢体を動かすたびに、大粒の汗の雫が月の光を反射してダイヤモンドのように一瞬だけ煌めいて祐樹の浴衣へと落ちる。そして、すっかり育ち切った彼の先端部分からもさらに大きな粒がダイヤモンドの艶やかさと清浄さをまとって、落ちるか留まるかを思案していそうな様子だ。ものすごく素敵で刺激的な眺めだった。
それよりも祐樹に深い悦楽を感じさせてくれる極上の花園の中は、濡れたシルクが包み込むような感触だけでも頂点を極めそうなのに、そこに彼の肢体の動きが加わって、祐樹を天国にいるような気分にさせてくれる。結合部分では熱く湿った肌が淫らな協奏曲を奏で、合いの手のように鈴虫の鳴き声が聞こえる。最愛の人の先端部分からは透明ではなくオパールのような光を放つ液体が混じって、祐樹の浴衣へと落ちてきた。
彼も限界が近いのだろうと判断し、祐樹は手を後ろに回して浴衣の帯を解いた。帯と同時に浴衣も床へと居場所を変えたのを確認し、祐樹の腰を思いきり強く最愛の人へと突き上げた。
「あ……っ、ゆ、祐樹……っ」
祐樹の先端部分が、最愛の人の月の弓のようにしなやかに湾曲する奥の聖域にたどり着いた。その箇所は最愛の人が最も感じる場所で、閉じることが出来なくなった濃い紅色の唇の端から銀の雫がとめどなく溢れ出、紅色の顎にかけて細い川を作っていた。最愛の人が深遠な悦楽に顔を上にあげたら、月の光がその細い川を静謐に、そしてどこか淫らに照らしている。祐樹の先端部分をすっぽりと包み込む、熱いゼリーの感触は、言葉に出来ないほど良かった。
「ゆ……っ、悦すぎて……、もう……っ」
最愛の人の肢体が、強風に散らされる桜の若木のように反った。
「私も同じです。聡、一緒に、ね」
最愛の人が祐樹の浴衣を脱いだ腹部に真珠の熱い放埓をばら撒いたのと、祐樹が最愛の人の極上の花園の奥の奥処に愛のエキスを放出したのはほぼ同時だった。
「愛する聡、とても良かったです」
熱く荒い呼吸を何とか整えて最愛の人に告げた。彼は要を失った扇のように祐樹の身体に崩れ落ちてきて、その重さと熱さが気持ちいい。
「祐樹、愛しているから、こんなに悦いのだろうな……。それとも祐樹に愛されているからだろうか……」
やや掠れた艶やかな声が、月の光よりも祐樹を魅惑の淵へと誘ってくれる。
「きっとその両方ですよ。そういえば、聡のココはあまり愛していませんでしたね。ついつい気持ちが急いてしまっていて、その点については申し訳なく思います」
胸の慎ましやかなルビーに、祐樹が腹部から指で掬った真珠の雫を一粒落とした。まるで紅い薔薇の花弁に真珠が宿っているようだ。その真珠も月の光を映してまるで極上のオパールのように多彩に煌めいている。精緻な宝石細工のような飾りは最愛の人に良く似合っている。その光景を崩してしまうのは惜しくて、もう片方の胸の尖りを爪で弾いた。
「あ……っ」
彼が鈴虫のように小さな声を出したのは、胸への愛撫のせいか、それとも祐樹が花園から退いたからだろうか。いや、多分両方だろう。
「少し休んだのちに、食事を再開しますか。それとも露天風呂で月見酒と聡の肢体を堪能するという選択肢もあります。どちらになさいますか?今度は私が誠心誠意、聡の肢体を愛します。今までは聡のほうが負担も多かったでしょう?」
親指と中指でほんの小さな突起を挟み、ひねると同時に人差し指で先端部分を宥めるように円を描いた。最愛の人の肢体にくすぶる愛の交歓の残り火が再燃しないように細心の注意を払って指先を動かした。
風向きが変わったなと素肌で感じた瞬間、濃い金木犀の香りが二人の身体を包みこんだ。この愛の交歓の甘さにつられて香っているように思えた。ただ、祐樹の記憶では九月の末から十月初めくらいに咲くような気がした――いや実際に花を見たわけではなく、救急救命室から帰宅する午前三時頃に、どこからともなく香っているのを感じるだけだったが。
この旅館は京都の秋を楽しんでもらいたいという趣向なので、早く咲く木を取り寄せているのかもしれない。ただ、金木犀の甘い香りは、愛の交歓のあとの最愛の人の素肌の香りとよく調和していて、祐樹が今まで嗅いだどの金木犀よりもいい香りだ。愛の交歓の充足と、束の間の安寧の時間だからこそそう思うのだろう。
「――露天風呂に行きたいな」
最愛の人の潤んだ眼差しが艶やかな光を放っている。
「分かりました。月見酒を楽しみながら、温泉に浸かって……そして、そのあとで、これの続きをしましょう」
指先で愛していた胸のルビーのような煌めきを挟んで先端部分を強く押した。
「あ……っ」
艶やかな甘い声が、金木犀の香りと、そして満月の冴え冴えとした光の中に溶けていくようだった。
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