「気分は下剋上 月見2025」18

月見2025【完】
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This entry is part 18 of 25 in the series お月見 2025

「水曜の百貨店だろう?エルメスの近くを確かに通ったので多分そのときに見られたのだろうな。ただ、『医療従事者視点での病院改革』や応用できそうな術式は病院の中だけしか考えないようにしている――ん!この月見だんごの歯ごたえがモチモチでとても美味しい。こういう食感はどうやって出すのだろう?」
 最愛の人の言うとおり、搗きたてのお餅みたいに噛むと歯が弾かれる。それに餡子もほのかな甘みで、祐樹でも何個かは食べられそうだ。
「ススキの葉がいかにもお月見に相応しいですよね。先ほど散策した庭で見たススキはまだ銀色といった風情ではなかったのですが、こちらはしっかり銀色になっていて……。そうそう、その百貨店では何を考えていらっしゃったのですか?」
 彼のことは何でも知りたいと思う気持ちと、彼にだって祐樹にも明かさない心のひだが有っても良いという気持ちがせめぎあう。彼があいまいな表情を浮かべたらブリ丼、いやエルメスの新作バッグ・ブリドンのことに話題を変えようと思っていると、薄紅色の唇が誇らしそうに花開いた。
「あの時は、祐樹が今頃病院で何をしているのか、ということと、祐樹に何を作ったら喜んでもらえるかな、と献立を考えていたと記憶している」
 ――その意外な答えに絶句し、盃をテーブルの上に置いた。
「それは嬉しいのですが、三好さんは『難しそうなことを考えていらっしゃったに違いない』と言っていましたよ?」
 最愛の人は少し困ったような表情を浮かべた顔に、唇だけが花よりも綺麗に艶めいていた。
「祐樹も知っているだろうが、百貨店の中は人がたくさんいるだろう?家の中だときっともっと楽しそうな顔をしているとは思う。ただ、鏡を見ていないので自分では分からないが。人混みの中で祐樹を想うとき、表情には出さないように努めている。だから、三好さんの目にはそう見えたのだろうな。病院の門をくぐって帰路につくと、病院内のことは頭からどこかに飛んでいって、祐樹のことしか考えていない。え……?」
 最愛の人のあまりの健気さと愛おしさで自制心が雲散霧消した。情動のままに立ちあがって、最愛の人のそばに近づくと、唇を重ねて、浴衣の襟に手を入れた。しっとりと重なった唇からは柚子の香りがお香のように漂っている。浴衣の襟から彼の心臓に手を当てた。鼓動が少し早いような気がするが、それはきっとアルコールの影響だろう。――心臓の鼓動は、祐樹にとっては仕事で何人、いや何百人もの命を蘇生させてきた。しかし、その中の誰よりも、いや日本中、世界中で最も貴重な彼の心臓の拍動に手を触れていると、最愛の人も祐樹も生きているという実感が手から胸へと伝わってくる。
「ん……祐樹……っ」
 祐樹の指に触れている彼の胸の慎ましやかな尖りがツンと尖ってきて指に心地いい。先ほどから押し殺してきた危うい情動をここで解放しても良いのではないかと、啄むようなキスを重ねながら彼の目を熱い眼差しで見つめた。
「祐樹……っ、もう片方も……触れて欲し……っ」
 祐樹の手よりも早く最愛の人の細く長い薄紅色の指が紺色の浴衣の襟元を乱していく。その淫らな妖精めいた動きに見入ってしまった。まだ薄紅色の二つの尖りが外の空気に触れ、そして祐樹の指の熱を移したかのように赤いギアマンよりも煌めいて見えた。
「露天風呂で、愛の交歓をしようと思っていましたが、聡があまりにも愛おし過ぎて、我慢できません」
 愛の交歓のときだけ呼ぶ彼の名前を口にすると、月の光を纏った最愛の人の肢体が太刀魚のように艶やかに跳ねた。
「我慢などしなくても……あ……っ、ゆう……き……っ、もっと……強く……」
 最愛の人の薄紅色の肢体が月の光にしどけなく晒された。紅色の小さな宝石のような突起を掴んで微細に動かすと、艶やかな声が鈴虫の鳴き声に混ざって天上の音楽のように響いていた。
「聡……色香だけを纏った姿を余すところなく見せてください」
 彼の紅色の震える指が器用に動いて帯を解いていく。その帯が微かな音を立てて床へと落ち、続いて衣擦れの音を残して浴衣も後を追った。
「下着は付けていらっしゃらなかったのですか……?」
 月の光と色香だけを纏った彼は夜だけに咲く花のように淫らで、そして無垢な美しさで満ちていた。
「祐樹に早く……抱かれたかったので……」
 その言葉通り、彼の下腹部の花芯は半ば育っていた。胸の二つのルビーのような尖端をぎゅっと摘まんで強く弾いた。
「あ……っ、祐樹…………っ」
 言葉と共に銀の雫が紅色に染まった唇から滴った。そして、彼の育ち切った花芯から先走りの透明な雫がポトリと空中に落ち、月の光を宿したかと思うと床へ落ちた。その繊細な美しさに見惚れていると、最愛の人は祐樹にしなだれかかるやいなや、意外な行動に出た。
「え?」
 思わず目を見開いてしまった。

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