「気分は下剋上 叡知な宵宮」最終話(18禁)

「気分は下剋上」叡知な宵宮
This entry is part 45 of 45 in the series 気分は下剋上 叡知な宵宮

【18歳未満の方は閲覧できません】

この作品には、性行為や身体的接触などを含む成人向け描写が含まれています。
18歳未満の方、またはこのような内容に不快感を覚える方は閲覧をご遠慮ください。
作品内の描写・登場人物・設定はすべてフィクションであり、実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。

「聡……最高に良いです……」
 情熱のまま強く抱きしめると、最愛の人も祐樹の肩に手を回して繋がったまま濃厚なキスを交わしてくれた。しかも祐樹の腰の動きに合わせて唇が揺れるのも最高に良い。祐樹の律動で背中がコンクリートの壁に押し付けられるたび、最愛の人の肢体は小刻みに跳ねる。
「あ……っ、祐樹……っ、……っ」
 甘美な毒に浸されたような声が小さく響き、コンクリートの壁に紅い花が咲いたかのような錯覚を抱いた。繋がった部分から淫らで熱い水音が夜の静寂を破り、最愛の人の甘い声と混じり、背徳的な旋律が階段にこだました。
 祐樹は最愛の人の胸元の紅い尖りを強く吸い上げ、指で捩じる。その刺激と同時に最奥を打ち据えると、最愛の人の肢体が大きく反り帰り、先ほど祐樹が放った白く熱い蜜が滲みだして祐樹をさらに濡らした。
「ゆう……っ、祐樹……っ、もう……っ、だめ……っ」
 最愛の人の短く整えられた爪が祐樹の背中に食い込み、肢体ごと震えながら極みへと達した。同時に祐樹も耐え切れず、熱を一気に最奥へと迸らせた。二人の荒い呼吸だけが、夜の非常階段に響き渡る。この殺風景な愛の交歓の舞台で交わった熱は、冷たいコンクリートすら薔薇の園に変えてしまうかのようだった。濡れた粘着質の音を立てて繋がった部分を解き、二人して冷たい階段に並んで腰を下ろし、余韻を愉しみながら衝動のままキスを交わした。
「聡、いつもながら素敵でした」
 後の戯れ代わりのキスをしながら熱の籠った声で告げた。
「祐樹、私も、とても感じた……」
 最愛の人の紅く濡れた顔は、朝露を宿した紅薔薇のように綺麗だった。
「正直に言いますね。この下の踊り場、つまり『グレイス』の一階上ですが、そこで性行為をしたのはホテルに行くお金が惜しかったり、なかったりしたからです。断じて愛情が深かったというわけではなくて、性衝動がおさまってくれればいいという安易な考えからでした。しかし、今夜聡と抱き合ったせいで、この階段での愛の交歓はこの上もなく甘美なモノというふうに上書き保存されました。工事が終わったらこういうことはもう出来なくなりますが、私にとってこの場所は聡との特別な想い出として生涯忘れることはないでしょう」
 最愛の人は呆気にとられた感じで祐樹の告白を聞いていた。
「そうなのか?てっきりホテルまで行く時間ももったいないような魅惑的な人を祐樹が誘っていたと思っていた……。だから、『グレイス』に一緒に来たときには誘ってもらえない私はその人、いやその人たちよりも魅力がないとばかり思って、内心落胆していた……。それが勘違いだったのか……」
 最愛の人の自己評価の低さは知っていたが、そこまで卑屈に受け止めていたのは意外だった。
「まさか……。聡は唯一の生涯に一人と決めたパートナーですよ。そんな大切な人を、人目がある場所で抱き合いたくなかっただけです。聡は『グレイス』でも羨望の的です。私が非常階段に誘ったら他の客も皆店から出て愛の行為を覗き見するのは必至でしょう。聡の乱れた姿を見られたくない一心で必死に自制していました。私と二人きりの時にはどんなに乱れても構いませんが、他の人には見せないでくださいね」
 紅色の額に誓約のように口づけた。
「それは約束する……。一生、祐樹としかこういうことはしないし、したくないな……。約束のしるしに……」
 薄紅色に染まった小指が祐樹へと差し出された。思わず笑ってしまったが、最愛の人はとても真剣な表情を浮かべている。
「指切りげんまんですね。針がたとえ千本ではなく何十万本でも誓えますよ」
 小指を絡めて愛の誓いを交わした。

  <了>

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