- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」1
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」2
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」3
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」4
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」5
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」6
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」7
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」8
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」9
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」10
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」11
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」12
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」13
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」14
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」15
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」教授視点 1
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」教授視点 2
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」 16
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」教授視点 3
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」 17
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」教授視点 4
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」18
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」 19
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」20
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」教授視点 5
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」教授視点 6
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」21
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」22
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」教授視点 7
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」23
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」教授視点 8
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」24
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」教授視点 9
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」25
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」教授視点10
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」26
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」教授視点11
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」27
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」教授視点12
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」28
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」教授視点13
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」29
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」教授視点14
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」30
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」教授視点15
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」31
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」教授視点16
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」32
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」教授視点17
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」33
- 「気分は下剋上 知らぬふりの距離」教授視点18
最愛の人は手術中だろう。珍しく寝坊し、自宅では朝食を抜いていたのだけれども、秘書に頼んで用意して貰ったかどうか気になった。
祐樹は、久米先生がリスみたいにこっそりとカップ麺やポテチなどを隠しているのは知っていた。しかも、冬眠中の熊が食べるのかと、思わず突っ込みたくなるほどの量だった。もちろん熊が冬眠中に何も食べないことくらいは知っている。きっと本人も正確な数を把握していないのをいいことに、カップ焼きそばのUFOを失敬して食べた。
岡田看護師とのデートのレクチャーや場所選び・会話のキャッチボールを祐樹と柏木先生と数限りなくしてきたので、そのお礼としてカップ焼きそばくらい貰ってもいいだろう。それに、「触るな!危険!!」とマジックで久米先生のクセのある字で書いてあるミカン箱の大きさの段ボールにはポテチとカップ麺が数えきれないほどストックしてあり、多分久米先生も正確な数は把握していないだろう。
最愛の人が手術中の場合、以前は第一助手に指名されていたが、祐樹が執刀医になってからは第一助手は久米先生が務めている。寂しくないといえばウソになるが、執刀医が第一助手を務めるのは病院の不文律ではNGになっている。久米先生が急病で倒れたなどは例外として認められるが。
祐樹は今日の執刀はないので主治医を務める患者さんを回って容態をヒアリングする。以前は「看護師さんのほうが話しやすい」と言われた覚えがあるが、今は祐樹と冗談を交わしながらチェックするところは押さえている。
京都ではさほどファンがいるとは思えないタイガースが大好きな患者さんが入院してきた場合は、暇をぬってタイガースの試合をダイジェスト版で見るなど、共通の話題を心がけている。ちなみに野球は微塵も興味がない。
「広瀬看護師、スタイル抜群ですね」
森脇さんが何度目か分からないほど言っている。もしかして「痴ほう」かと疑ったが検査の結果はそうでないことを示していた。
「それは本人の前で言わないでください。セクハラですよ」
森脇さんが首を傾げている。
「え?イシハラ.……裕次郎ですか!?若い頃憧れて髪の毛を真似ました」
いわゆる「痴ほう」ではなくて、天然ボケのようでもあった。
「いいえ!セ・ク・ハ・ラです。女性が嫌がることを言った場合は師長からきつい叱責が待っていますよ。スタイルや容貌を褒めたり、『安産型だね』とか『ウチの息子の嫁に来てくれないかな』などと言ったりした場合はセクハラになります。気をつけてくださいね」
看護師は医師と比べると立場が弱い。言い返すことができるほど度胸が据わっているなら良いが、泣き寝入りしている看護師が多いと聞いていた。だから医師である祐樹が注意喚起を続けるしかない。
「ほう……。安産型もダメなのですね?言ってしまった記憶があります。もちろん褒めるつもりでしたが」
がっかりした表情を浮かべている。
「理由はどうであれ駄目なものはだめです。容姿に対して余計なことは言わないほうがいいですよ、広瀬看護師がどの程度心に傷を負ったかまでは分かりませんが、もし、非常に嫌な気持ちになった場合は看護師長か、もしかしたら香川教授から直々のお叱りがあるかもしれませんよ。教授の逆鱗に触れるのは嫌でしょう?」
森脇さんも最愛の人の手術を、首を長くして待っている人の一人で香川教授を神様のように敬っている。実際問題として看護師に対するセクハラは看護師長から看護部長に報告があがるので、教授職はノータッチだ。まあ、最愛の人が三好看護師などに直訴されたら注意はするだろう。何せ医師よりも看護師のほうが人手不足で辞められたら非常に困るので、医師としてはフォローに回っている。
「思っても言ってはならないことが多くなりましたな。年は取りたくないものです……」
ぶつぶつ言っている森脇さんの病室を出た。バイタルや精神状態を電子カルテに入力して、時計を見ると十一時半だった。
夏輝が呉先生の不定愁訴外来に行くのは十二時だったなと思った。主治医として病棟巡りは終わったので、充分時間がある。会社ではきっちり正午にならないと昼ご飯休憩は取れないと聞いたが、他科はともかく香川外科では職務さえきちんと果たせば何も言われない。呉先生と夏樹がどんな会話をするのか気になったので、行ってみることにした。
「田中先生!」
新館を抜け、旧館エリアの由緒と威厳のある建物に入ろうとしたら、夏輝の声が聞こえてきた。有瀬誠一郎氏の病室では見なかったが、祐樹が他の病室を回っている時に入れ違いになったのだろう。夏輝は今日もТシャツにチノパンという若者らしい恰好で、肩には大きなトートバッグをかけている。中身がそれほど入っていないところを見ると、お父さまの入院に必要な物を持って来て病室に置いたのだろう。そういえばハウスキーパーだか家政婦さんが家事をしていると聞いた。その人にも手伝って荷造りをしたのだろう。
「こんにちは。よく眠れましたか?」
―――――
もしお時間許せば、下のバナーを二つ、ぽちっとしていただけたら嬉しいです。
そのひと手間が、思っている以上に大きな力になります。

にほんブログ村

小説(BL)ランキング

コメント