「気分は下剋上 ハロウィン 2025」24

「気分は下剋上 ハロウィン2025
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This entry is part 27 of 31 in the series 気分は下剋上ハロウィン2025

 祐樹はドアと廊下の狭間で立ち止まった。最愛の人がここに来る前に、思い出すのも忌まわしい「悪夢」について相談した。それを呉先生は「脳の暴走」だと理路整然と解説してくれたことに、祐樹は感謝していた。多分、いやきっと、今夜からはそんな夢は見ないだろう――そう思い、感謝の意を込めて笑みを返した。夢の内容を人に話すと良い、という話もどこかで読んだ気もする。
「祐樹、どうしたのだ?」
 最愛の人がドアの向こうで不思議そうな表情を浮かべている。
「いえ、何でもないです。呉先生がハロウィンの催し物に出てくれるという、浜田教授や内田教授と約束したミッションを達成できて、安堵しただけです。とはいえ、両教授の本命は川口看護師でしょうけれども、ね」
 最愛の人は、純白の薔薇のような笑みを浮かべている。
「呉先生は恥ずかしがり屋だし、自分から目立とうとはしないタイプの人だ。しかし、両教授と話すといい影響を受けるだろうな。特に内田教授は医局内クーデターを見事にやり遂げた実績を持っている人なので、呉教授・・の誕生にも有益なアドバイスができるだろう」
 最愛の人がアメリカの病院で名をあげたのちに教授職として凱旋帰国した。それ以前は医局内で順送り人事が普通だったこの大学病院でも、そうしたことが可能だと知った内田教授は、昭和の時代から変わっていない、いやもっと昔の明治・大正からの習わしかもしれないが、とにかく、教授に胡麻をすっておけばいいという出世方法――ある意味この大学病院のパラダイムシフトを完成させた人物だ。だからきっと呉先生にもいい影響を与えるだろう。
「では、私は執務室に寄ってから手術の準備をする。祐樹は午後、病棟巡りだろう。では、また」
 エレベーターが医局階で止まったので、会釈して別れた。医局のドアをスライドして開けると、久米先生が待ち構えていた様子で祐樹に近づいてきた。
「田中先生、小児科のハロウィンの催し物にまた主役として出ると聞きました。脇役でいいので、私も参加したいです」
 久米先生は、真剣極まりない表情だ。
「いや、そんなことを私に言われても……。小児科のイベントなので浜田教授に直訴なさったらいかがですか?それに主要メンバーは既に決まっていると聞いています。残っているのは、頭に段ボールのようなものをかぶって私に襲い掛かってくるいわゆるモブキャラくらいしかいないと思いますが」
 柏木先生が久米先生の出番についてスルーしろと言われていたが、久米先生は別ルートで知ってしまったのかもしれない。
「段ボールを頭からかぶった……。前のイベントでも、作中で主人公から『頭、富士山!』と呼ばれた、顔が出せない呪霊の役でした!だから今度はちゃんと顔が分かるキャラ希望なのですけど!!今回は高専生時代の話だと聞きました!田中先生は前回と同じくメインキャラなのですよね。その親友役、空いてないでしょうか?」
 え?と思ってしげしげと顔を見てしまった。ダイエットするする詐欺の久米先生はポヨンとした体つきに焼いて膨らんだお餅のような顔だ。つまり塩顔のイケメンですらっとした長身でもない。「一度呉先生に診てもらったらどうですか?」と言いかけて、口をつぐんだ。以前の呪霊役だって体形が似ているという見地から選ばれたのに、あんなシュッとしたイケメンが務まるとは到底思えない。
「あいにく、その役に関しては浜田教授が直々に声をかけた人がいるらしく既に決定しています。まあ、小児科のハロウィンの催し物は毎年行われるらしいので、根気よく待ってはいかがですか?あ、柏木先生病室巡りに行ってきます」
 祐樹と久米先生の掛け合いを面白そうに見ていた柏木医局長に声をかけて医局を後にした。そういえば、久米先生は今日の午後の手術で第一助手に名を連ねていた。手術準備室に行かずに医局で祐樹を待ち構えていたということになる。どれだけ出たがりなのかと呆れながら主治医を務める患者さんの病室に入った。
 一通り回ったのちに医局に戻る途中で三好看護師と行きあった。
「田中先生、小児科の催し物に参加なさるんですよね」
 三好看護師は有能な人だが看護師らしい潔癖な点がある。若干構えつつ、「はい」とだけ返した。
「看護師のグループLINEの通知が鳴りっぱなしです。大反響ですね。何でも高校生の役をなさるとか。私もアニメは見ていませんが今度の休みに一気見して、催し物の日には小児科に行ってわずかばかりではありますが、寄付をしようと思います」
 ……高校生――それだけは、言わないでほしかった。この年になって学生服のような物を着るとは祐樹も想像していなかっただけにかなり恥ずかしい。
「はい。小児科の浜田教授のたっての望みで仕方なくそうなってしまいました。決まったものは仕方ないので、頑張って演じるのみです」
 三好看護師は薄いピンクに塗った唇に淡い笑みを浮かべていた。

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